住宅価格が高騰するなか、ペアローンを選択する夫婦が増えています。しかし、ペアローンは融資可能額が増えても、あらゆるリスクを想定してからでなければ後々悲惨な状態にもなり得ると、長岡FP事務所代表の長岡理知氏はいいます。本記事ではEさん夫婦の事例とともに、ペアローンに潜むリスクについて解説します。
「お金はなくても不倫する余裕はあるのね。」年収280万円、33歳・甲斐性なし夫の不貞行為で住宅ローン返済計画が崩壊…4,500万円のペアローンの行方【FPの助言】 (※画像はイメージです/PIXTA)

住宅ローンの返済は滞納、自己破産に陥るも、不貞相手の家に通い続ける夫Eさん

「どこまで甲斐性がない男なんだ」と妻の父親は怒り心頭です。夫Eさんの祖母は妻Sさんに出て行ってもらいたいという意向をくり返していましたが、離婚の原因が自分の孫にあるという負い目もあり次第に態度を軟化させました。夫の慰謝料を免除するかわりに土地の使用貸借を継続し、祖母が亡くなってから孫(夫Eさん)に相続させ、そののちに妻Sさんに売却するという意向に変化してきました。

 

しかし、妻Sさんの父親は不服です。

 

・祖母の死後に孫(夫E)に相続されるという確約がない

・夫Eに相続されたとしても、夫が債務不履行などによって差し押さえられるかもしれないかもしれない

・夫Eがなにも犠牲を払っていない

 

などと詰め寄りましたが、そこからは進展していません。

 

夫はその後、住宅ローンの返済まで滞納。自己破産をする恐れがあることから、妻Sさんは離婚手続きと同時に銀行に相談し住宅ローンを単独名義に変えました。自己破産をしてしまうと連帯保証人の妻が一括返済を求められるからです。

 

多重債務状態だった夫はあえなく自己破産の手続きをしたようです。財産分与として渡したおかねも借金返済の綱渡りに消えてしまったのでしょう。慰謝料は夫も不貞相手も払えず、養育費も支払っていません。

 

そのような状態になっても夫はまだ不貞相手のシングルマザーの古アパートに入り浸っています。この状態に夫の祖母も両親も恥じ入り、土地を妻Sさんに安く譲るしかないと覚悟を決めつつあるようです。

 

夫の実家の家族にとっても、祖父の実家の土地を孫に使わせることはいい選択だったはずです。しかし大切な土地を失う危険もあったとは気づかなかったでしょう。

 

夫の不貞が発覚したとき、夫は言い訳として「所得の低い俺を馬鹿にしているように感じた」などと言っていました。言い訳にすらならない幼稚な理由ですが、その後の行動によって実家の家族にまで馬鹿にされかねない状況です。住宅を購入するときに、どれほど自分がリスクの高い状況に置かれているか理解できていなかったと思います。「世帯年収」だけで住宅が買えるかどうかを判断していると、のちにトラブルを抱えかねないのです。

ペアローンでの住宅購入はひと呼吸して考えてから

実のところ、「家を買う」という行為と「離婚したときを想定する」というのは両立しません。離婚を前提として負債を持って家を買う人は通常いないからです。

 

「ペアローンは離婚のときにトラブルになる」ということは知識としてあっても、夫婦関係が良好であるからこそ費用をかけて立派な家を選びたいので、ペアローンでなければ手に入らないような買い物になるのです。離婚せず、定年退職まで夫婦で働くことができたら何も言うことがない100点満点の人生でしょう。

 

しかし人生は必ずしも想定どおりではありません。頭の片隅で「もし離婚することになったら」という想定をしておくことも、リスク管理のひとつです。

 

 

長岡 理知

長岡FP事務所

代表