住宅価格が高騰するなか、ペアローンを選択する夫婦が増えています。しかし、ペアローンは融資可能額が増えても、あらゆるリスクを想定してからでなければ後々悲惨な状態にもなり得ると、長岡FP事務所代表の長岡理知氏はいいます。本記事ではEさん夫婦の事例とともに、ペアローンに潜むリスクについて解説します。
「お金はなくても不倫する余裕はあるのね。」年収280万円、33歳・甲斐性なし夫の不貞行為で住宅ローン返済計画が崩壊…4,500万円のペアローンの行方【FPの助言】 (※画像はイメージです/PIXTA)

「甲斐性なし夫」の不貞行為が発覚

妻のSさんが夫について不審に思い始めたのは半年前。それまで夫は夕方には17時は帰ってきてビールを飲んでテレビを見ている毎日だったはずですが、最近は毎日のように帰宅が深夜になっています。

 

「仕事が忙しい」と夫は言うものの、給与明細の金額は相変わらずの状態。服装もだらしなく髪は伸び放題、とても多忙なビジネスマンには見えません。なにかトラブルを抱えているのだろうか、仕事がうまくいかない心労で思いつめたり、自殺したりしないだろうかと妻は心配でなりませんでした。本人を問い詰めても、仕事だと言うばかり。

 

「あんなお金のない男を相手にする女はいない」と、妻は不貞を疑ってはいませんでしたが、その予想は外れてしまいます。妻が依頼した探偵事務所の報告には衝撃の事実がありました。毎日、女性の家に入り浸っているというのです。しかも相手は10歳年上の42歳で、シングルマザーです。毎日古いアパートに「帰宅」して深夜まで過ごしていたということでした。

 

離婚を決意した妻だったが…問題は住宅の処分

生活費も入れられないほどの収入でありながら、毎日不倫相手の自宅に入り浸る夫に衝撃を受けたSさんでした。

 

お金はなくても不倫する余裕はあるのね。

 

夫にそう切り込み、問い詰めたところいろいろと言い訳をしていましたが、Sさんは許す気になれず離婚を決意しました。養育費は今後必ずもらうとして、問題は自宅の処分をどうするのかです。現状を振り返ってみるとポイントは次の4つです。

 

1.土地は夫Eさんの祖母の所有(使用貸借)

2.建物の購入費用として妻Sさんの父親から1,000万円の贈与

3.2,250万円ずつのペアローン・住宅ローンの残債は約4,100円

4.現在の建物の評価額は4,800万円

 

妻Sさんが自分の父親に相談したところ、解決策として提案されたのは、

 

・父親が夫の祖母の土地を買い取る

・妻Sさんが銀行に交渉しローンを単独名義に変更

・財産分与として夫に224万円を渡す

・今後は妻Sさんが子供と住む

・離婚の慰謝料+不貞相手からの慰謝料を受け取る

 

※[(評価額-ローン残債)×妻の寄与分を差し引いた割合÷2]+妻の寄与割合で財産分与を算出

 

というものでした。しかしながら、土地の所有者である夫の祖母は「この土地は亡くなった夫の元実家の土地なので売ることはできない」と拒否。そうであるならば、

 

・夫が銀行から融資を受け、夫の単独名義に変更

・妻が寄与割合に応じて財産分与を受け取る(476万円)

・離婚の慰謝料+不貞相手からの慰謝料を受け取る

 

という方法しかありませんが、夫Eさんは貯蓄ゼロ。新たな住宅ローンの融資を受けられるほどの年収もありません。さらに夫はクレジットカードを使って不貞行為をしていたため、現在は多重債務に陥って問題解決の糸口がない状態。