急速に進行する人口の高齢化に耐え切れずに年金制度が崩壊し、将来受け取れる年金が「ゼロ」になったとしたら……。想像するだけで恐ろしい事態ですが、無年金で平均寿命まで生きていくには一体どれほどの貯蓄が必要になのかシミュレーションしてみましょう。
恐ろしい…「もし年金制度が崩壊したら」、65歳・夫婦が“平均寿命”まで生きるのに必要な〈貯蓄額〉は?【シミュレーション】

もし「年金ゼロ」になったとしたら…夫婦に必要な貯蓄額は?

急速に高齢化が進む日本。もはや、年金があれば老後は安心という社会ではありません。国や銀行・証券会社などの金融機関は、「年金だけでは老後資金が不足する」とたびたび警鐘を鳴らし、自助努力による資産形成を呼びかけています。

 

ここで基本に立ち返り、どれだけのお金があれば、年金に頼らずに安心の老後を迎えられるのか。総務省「家計調査」(2022年)で65歳以上・無職という夫婦の平均的な家計をみていきましょう。

 

【ともに65歳以上・無職の夫婦世帯の家計収支】
■2022年

実収入:24万6,237円(うち公的年金21万9,762円)
実支出:26万8,508円
・消費支出:23万6,696円
・非消費支出:3万1,812円
・・黒字額:▲2万4,871円
・・黒字額2:▲3万8,746円

  • 食料:67,776円
  • 住居:15.578円
  • 光熱・水道:22,611円
  • 家具・家事用品:10,371円
  • 被服及び履物:5,003円
  • 保健医療:15,681円
  • 交通・通信:28,878円
  • 教養娯楽:21,365円
  • 直接税:12,854円
  • 社会保険料:18,945円

※出所:総務省『家計調査』
※「黒字額2」は収入が公的年金だけと仮定した場合の黒字額

 

生活費の赤字分を貯蓄で補填する、というのが一般的な考え方ですから、平均的な額の年金を受け取っている世帯では、月2.5万~4万円ほどの赤字が発生することになります。そうすると、20年で600万~960万円ほど、30年で900万~1,440万円ほどの貯蓄があれば、平均的な老後を送ることができる計算になります。

 

では次に、将来仮に年金制度が崩壊し、老後の収入が「ゼロ」になった場合を想定してみます。年金収入がない場合、毎月単純に26万8,508円の支出が発生することになるため、1年間生活していくのに必要な金額は322万2,096円。これは20年間の合計で約6,444万円、30年間の合計では約9,666万円と、恐ろしい金額に上ります。

 

厚生労働省の『令和4年簡易生命表』によれば、2022年の日本人の最新の平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳ですから、仮にこの夫婦がともに同い年だとすると、65歳から男性の平均寿命まで5,171万円。夫が亡くなった後の生活費が単純に半分になると仮定すると、女性の平均寿命までで6,144万円。

 

「もし、年金制度が崩壊したら」……想像することさえも恐ろしいですが、夫婦が年金に頼らずして平均寿命まで生きるには、あるいは、年金制度の将来に対する不安から解放されるためには、6,000万円超の貯蓄が必要、というのが1つの目安になりそうです。