新入社員の3割が3年以内に退職する、とはよくいわれることですが、退職者のなかの少なからぬ人が「非正規社員」という働き方を選択しています。「自分らしい生き方」を求めてサラリーマンを辞め、しがらみの少ない「非正規社員」の道を選んだ人には、どんな未来が待っているのでしょうか。詳しくみていきます。
「自分らしく生きる」と“非正規”にシフトした20代・会社員…65歳で顕在化する<致命的なリスク> (※写真はイメージです/PIXTA)

正社員と非正規社員…65歳以降に受け取る年金に「5万~6万円」の差

さらに現役時代の収入が少ないということは、それに比例して老後に受け取れる年金額も少なくなることを忘れてはいけません。

 

実際にどれほどの年金を受け取れるのか、以下の計算式に当てはめて考えていきます。

 

国民年金
年金額×(保険料の納付月数÷480ヵ月)

厚生年金
■加入期間が2003年3月まで
平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月までの加入月数

■加入期間2003年4月以降
平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数

 

新卒から定年退職まで正社員として勤め上げ、平均的な給与を受け取り続けてきた場合、厚生年金部分が「53万×5.481/1000×456」でおおよそ月11万円。国民年金が満額受給なら月17万4,000円ほど手にできることになります。

 

一方、途中で非正規社員にシフトチェンジした人はどうでしょうか。「26万×5.481/1000×456」で、厚生年金部分は月5万4,000円ほど。国民年金が満額だとしても、年金受給額は月12万円を下回る水準になります。

 

元・正社員と元・非正規社員の間には、老後に月5万〜6万円ほどの収入差があり、その差は最期まで続きます。先ほどみた通りの給与水準では潤沢な貯蓄を行っているとも考えづらく、年齢を重ねて病気のリスクが高まり、医療・介護費が大きく膨らむ可能性のあるこの時期に低年金であることは、文字通り致命的といえます。

 

さらに、注意が必要なのは「住まい」の問題。高齢化の進行に伴ってさまざまな制度が変更になる可能性はあるものの、少なくとも現状では「単身高齢者は賃貸は借りづらい」というのが事実です。「高齢者」というだけで賃貸住宅の審査に落ちることは珍しくなく、家賃節約のために引っ越すことも容易ではありません。最悪、「住むところがない」という事態に陥ってしまう可能性も十分に考えられます。

 

「お金よりも、自分らしく生きることが大事」という選択には、相応のリスクが伴うことを認識しておくべきでしょう。