「やりがいのある仕事」を求める人は多いようですが、業界や企業規模によって給与水準には明確な差が現れます。その後の人生に控える結婚や住宅購入などのライフイベントを考慮すると、「やりがい」だけで勤め先を選択すると、後悔することになってしまうかもしれません。詳しくみていきましょう。
月収40万円、「やりがい」重視の43歳サラリーマン…大学同期“大企業・金融マン”との〈給与格差〉に思わず後悔 (※写真はイメージです/PIXTA)

サラリーマンの生涯賃金…業界によって1億5,000万円以上の差

日本標準産業分類に基づく16大産業別に見ていくと、20代前半の月収がもっとも多い産業が25万2,200円の「鉱業,採石業,砂利採取業」。一方でもっとも低いのが21万3,500円の「複合サービス事業」。額面で4万円、ボーナス等も含む推定年収では120万円程度の給与差が生じています。

 

月給にして4~5万円程度の差であれば、当然羨ましくは思うでしょうが、「自分はこの仕事にやりがいを感じているし」と納得できる範疇かもしれません。ただ平均値をみる限りは、この給与格差は年齢ともに拡大していくというのが実情です。

 

大卒サラリーマン(平均年齢43歳、勤続年数13.5年)の平均月収は40万円、年収は推定658万円。仮に大学卒業後(現役、留年なし)、勤続38年・定年退職まで働いたとしたら、生涯賃金は2億5,000万円ほどになります。

 

業種別にみていくと、生涯賃金がもっとも高いのは「金融業、保険業」で3億5,000万円。ほか「鉱業、採石業、砂利採取業」と「学術研究、専門・技術サービス業」も3億円を超えており、平均の2億5,000万円を超えたのは全9業種でした。

 

一方で生涯賃金がもっとも低い業種は「宿泊業、飲食サービス業」で1億9,000万円ほど。トップの「金融業、保険業」とは1億5,000万円以上もの格差が生じます。あくまでも統計上の数値による単純計算ではありますが、業種によって都内の新築マンションが余裕で購入できるほどの給与格差が生じるのです。

 

これだけの差をみせつけられると、「やりがい」で仕事を選択した過去を思わず後悔したくなるかもしれません。

 

また、勤め先の規模によっても埋めようのない給与格差が生じるようです。大卒・男性正社員の平均給与について、全産業の平均値をみていくと、従業員数99人以下の小企業では、月収35万1,500円で推定年収は531万2,800円であるのに対し、従業員数1,000人以上の大企業では、月収44万3,800円で推定年収は769万6,800円。年収にして200万円もの差が付いていることがわかります。

 

また、給与水準がピークに達する50代後半を切り取ってみると、大企業は年収979万700円であるのに対し、小企業は651万6,000円。300万円超にも上る年収格差に加え、大企業と中小企業では、定年退職時に受け取れる「退職金」にも顕著な差が現れることになりますから、上にみた「業種」だけではなく、企業規模によっても生涯賃金が大きく左右されることになりそうです。

 

就職先を選択する際の条件として掲げる人の多い「やりがい」の有無。いまは転職も当たり前になりつつありますが、大半の人はじっくりと腰を据えて長く働きたいと考えているはずですから、「やりがい」を重視することは重要でしょう。

 

しかしながら、結婚や住宅購入、子どもの教育など、さまざまなライフイベントが発生するたびに実感するのは給与格差。定年退職間際に自身のサラリーマン人生を振り返ったとき後悔しないためには、職業選択の際に業種・企業規模ごとの給与格差を念頭に置き、一度冷静になって検討してみることが大切なのかもしれません。