元気に定年まで勤め、リタイア後は夫婦で仲良く、のんびりと暮らしたい……そう考えている人も多いでしょう。しかし、FP Office株式会社の梅田雅美FPは、十分な年金と老後の蓄えがあったとしても、ささいなきっかけで「思い描いていた老後生活」が崩壊してしまうといいます。具体的な事例を交えて詳しくみていきましょう。
年金「月29万円」都内在住の73歳男性、要介護の妻を〈有料老人ホーム〉へ…事情を知った44歳娘“大激怒”のワケ【FPが解説】  (※写真はイメージです/PIXTA)

老後高まるさまざまなリスク…「事前の備え」が人生を左右する

このような悲劇を起こさないために、A夫妻はどのような対策がとれたのでしょうか?

 

人生100年時代、2023年9月1日発表の100歳以上人口は53年連続で増加、9万2,139人となりました(うち女性が占める割合は88.5%)。人生100年時代が現実味を帯びていることがわかります。

 

誰もが100歳まで元気に過ごすことができれば幸せですが、健康寿命と平均寿命の乖離を見ると10年ほどあります。つまり、誰もが介護を考えなくてはならない時代になったということです。

 

出典:令和5年版高齢社会白書
[図表2]健康寿命と平均寿命の推移 出典:令和5年版高齢社会白書

 

そこで知っておきたいのが「公的介護保険」です。公的介護保険とは、40歳以上の人が加入して介護保険料を納め、介護が必要になった時に所定の介護サービスが受けられる社会保険です。

 

なお、公的介護保険でサービスを受けるためには、負担割合によって、現金の準備が必要です。加えてサービスの上限を超えた差額には別途支出がかかります。それらの出費の準備として、介護保険の活用も視野に入れておくことも有効です。

 

また、介護状態になって自分の意思が伝えられないことも想定して、エンディングノートなどで考えをまとめておくことも必要でしょう。

 

「親のお金」を頼る前に…44歳の娘ができたこと

最後に娘さんについては、まず大前提として、親の財産はあてにせず資産形成は自分の家庭単位でしっかりと取り組むべきでした。

 

どれだけ仲が良くても、お金が絡むと家族の絆はあっけないほど簡単に崩れてしまいます。そこでもし可能であれば、両親が元気なうちに今後の生活や相続について話しておきましょう。仮に認知機能が衰えてからでは、親の意思を知る機会が失われてしまうからです。

 

介護は身近な問題となっています。ぜひ一度、自分の家族だったらどうするのか、対策を考えてみてください。

 

 

梅田 雅美

FP Office株式会社

ファイナンシャルプランナー