終の棲家として「老人ホーム」への入居を検討する場合、考えなければならないのが費用のこと。しかし「大丈夫、お金はある」という人であれば、必ず施設に入居できるとは限りません。みていきましょう。
老人ホームに入れません!年金14万円・80代女性〈無情なひと言〉に絶望「1人で死んでいくしか」 (※写真はイメージです/PIXTA)

保証人いますか?おひとり様が直面する大問題

夫を亡くし、1人となった80代の妻。高齢者の一人暮らしは何かと心細く、老人ホームに入居すれば安心……そこでまず懸念されるのが費用面。厚生労働省の調査によると、遺族厚生年金の平均受給額は平均8万円ほど。さらに自身の分も合わせると、専業主婦だったという妻は月14万円程度の年金を受け取れていると考えられます。入居金ゼロというところもありますが、貯蓄で初期費用を賄い、月々の費用を年金で払えるような施設を選ぶことができれば、将来に不安はないでしょう。

 

問題は、夫を亡くした女性以外。結婚をせずに、子どももいない、頼れる身寄りもすでにいない……そんな生涯独身を貫いてきた女性です。

 

――大丈夫、お金の心配なんていらない。頑張って稼いできたから

 

厚生年金受給者の年金受取額は平均14万円。前出の遺族年金を受け取る専業主婦だった妻と同程度の年金を手にしています。経済的に自立し老後の心配なんてなんてゼロ、といったところでしょうか。しかし、

 

――保証人いますか? いない⁉ すみません、うちでは無理です

 

そう入居を断られるケースは珍しくありません。総務省が行った『高齢者の身元保証に関する調査(行政相談契機)』によると、病院や施設の9割以上が、入院・入居の希望者に身元保証人を求めていることが分かりました。身寄りのいない高齢者にとってまさに青天の霹靂。「1人で死んでいくしかないないのか」と覚悟を決めなければいけない結果です。

 

ただ、身寄りがないからといって、老人ホームへの入居が絶望的かといえばそうではありません。続いて、身元保証人がいない場合はどうするかの問い(複数回答可)に対して、「入院・入居させる」は3.5%、「入院・入居をお断りする」は15.1%、「必要な場面ごとに個別対応する」が60.3%、「身元保証の代わりに成年後見人制度や身元保証会社の利用を求める」が15.6%でした。病院や施設側も慈善事業ではないので、リスクのある人は受け入れられない、というのが本音。身元が保証できなければ仕方がない部分もあるでしょう。しかし成年後見制度や身元保証会社を利用すれば、施設への入居はOKというケースが多いので、その点は安心です。

 

そこで懸念となるのが費用。無償というわけにはいかず、成年後見制度の場合、報酬として月2万~6万円程度が相場。身元保証会社の場合、死後の事務手続きも合わせると100万~150万円が相場となり、老人ホームへの入居にはプラスαの費用として考えておく必要があります。

 

今後、高齢化の進展に伴い、このような行き場のない高齢者が増加するといわれています。問題の深刻化を受けて、施設側の受け入れ態勢も柔軟になっていくと期待されますが、それでも「1人で死んでいくしか……」というリスクは依然として高いと考えておいたほうがいいでしょう。費用面含めて、事前に準備をしておくことが重要です。