2022年、消費生活センターに寄せられた「マルチ取引」に関する相談件数は6,820件。「絶対に稼げる」「人生変えよう」などといって、特定商取引法の枠をはみ出た過激な勧誘が方々で行われているようです。実際、勧誘の現場ではどんなやり取りが交わされているのでしょうか。詳しくみていきます。
君の生涯年収、僕なら5年で稼げるかな…元同級生に個室の出口をふさがれ、強引に「マルチ取引」に誘われた24歳・会社員の〈恐怖体験〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

2022年「マルチ取引」に関する相談件数は約7,000件

――最近なにしてるの? 近況報告もかねて、久々に飲みにいかない?

 

学生時代、それほど親しい訳でもなかった同級生から何年かぶりにこうした誘いを受け、「ドキッ」としたことがあるという人は多いのではないでしょうか。その胸騒ぎにはさまざまな背景があるでしょうが、今回の「ドキッ」の正体は「なにかに勧誘されるんじゃないか」という不安です。

 

2022年、消費生活センターの「消費生活相談データベース(PIO-NET)」に寄せられた、「マルチ取引」に関する相談件数は6,820件。問題を抱えるすべての人がPIO-NETに相談を持ちかけている訳ではなく、水面下ではもっと多くのトラブルが生じていると推測されます。

 

そもそもマルチ取引とは、特定商取引法で「連鎖販売取引」として規制されている商法です。「マルチレベルマーケティング(MLM)」「ネットワークビジネス」など、呼称はさまざまですが、構造は同じ。商品を買って会員となった人が、また新たな人を勧誘し、会員組織を拡大していくという販売形態です。流通している商品は、健康食品や化粧品のほか、浄水器や美容機器等の耐久品など多岐にわたります。近年では、「モノなしマルチ」といって、「会員権」などをメイン商材とする企業も少なくないといいます。

 

会員は、新規会員の獲得に成功すると、「リクルートボーナス」などの収入を得られるため、これを目的に、学生時代の友人や職場の仲間、レストランや居酒屋でたまたま隣に居合わせた人にまで、幅広く声をかけていくのです。

 

「マルチ商法=違法」との認識を持っている人が多いようですが、実は、「氏名等の明示」「書面交付義務」など、特定商取引法で定められているルールに従っている限りは合法。日本国内でマルチ商法を行っている会社として日本アムウェイなどが有名ですが、同様の事業を行っている会社の数は、国内だけで500社とも1,000社ともいわれています。

 

ちなみに、日本アムウェイは22年に消費者庁から6ヵ月間の業務停止という行政処分を受けましたが、その理由は同社の会員が行った勧誘行為が、特定商取引法に違反していたため。同社の場合、マッチングアプリで出会った相手に対し、いわば「だまし討ち」の形で商品購入・会員登録の勧誘を行ったことが確認されています。