自身がなったら、家族がなったら…認知症への大きな不安
いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったりすることでさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態(およそ6ヵ月以上継続)を指す認知症。原因などからいくつかの種類がありますが、そのうち7割を占めるのがアルツハイマー型認知症です。早くから現れるのが記憶障害と、現在の年月や時刻、自分がどこにいるかなど基本的な状況を把握することができなくなる見当識障害。記憶については、昔のことはよく覚えているものの、最近のことを忘れやすくなります(以上、厚生労働省ホームページより)。
「自分がなったらどうしよう」「家族がなったらどうしよう」と、患者自身はもちろん、その家族も大きな不安に襲われるのが認知症です。
前出の内閣府の世論調査によると、認知症に対する自身の不安として、最も多いのが「家族に身体的・精神的負担をかけるのではないか」で73.5%。「家族以外の周りの人に迷惑をかけてしまうのではないか」61.9%、「家族や大切な思い出を忘れてしまうのではないか」57.0%、「買い物や料理、車の運転など、これまでできていたことができなくなってしまうのではないか」56.4%と続きます。
一方、家族の不安として、最も多いのが「ストレスや精神的負担が大きいのではないか」で65.1%、「家族以外の周りの人に迷惑をかけてしまうのではないか」58.3%、「経済的負担が大きいのではないか」49.7%、「自分(あなた)や大切な思い出を忘れてしまうのではないか」47.1%と続きます。
認知症患者とその家族でよくあるのが、80代の母と、定年を控えた50代のひとり息子というパターン。。息子はちょうどサラリーマン人生の中でも収入がピークに達するときで、厚生労働省の調査によると、平均給与は月収で41.6万円、年収で674万円。自身の老後のためにも、貯蓄のラストスパートといったタイミングです。
ある日、
80代母:あれ朝ごはん、何食べたかしら?
物忘れがひどいと、ちょっとした違和感から始まり、
50代息子:えっ、母が迷子⁉
母が近所で迷子になったと連絡を受け、大慌て。母の異変に「もしかして認知症?」と気付くことになります。やがて母を1人にすることができなくなり、定年を前にして退職……厚生労働省『雇用動向調査』によると、1年間に約9.5万人が介護離職していますが、そのうち男性では50代後半の介護離職が最多となっています。未婚率の上昇に伴い、「親と未婚の息子」という世帯は増えていることから、今後、「認知症の親と介護離職する息子」というケースも増えていくと考えられます。
自身、そして家族が認知症……決して他人事ではなく、誰もがなる可能性があります。「もし認知症になったら、どうしたいか/どうしたらいいのか」、不安を解消するためにも、日ごろから家族で話し合っておくことが重要です。