収入の減った夫、全額借換えは「難しい」見込みだったが…
2人が住宅を購入したのはわずか3年前ということもあり、住宅ローンの残債はまだあまり減っていませんでした。
残債は、直哉さん一人で借換えをするには少し大き過ぎる額です。さらに、直哉さんは4年前にスタートした自身の事業を育てるために会社員としての仕事をかなりセーブしており、収入も減っている状況でした。
総合的にみて、直哉さんが全額借入を行うのは難しそうだということは明らかです。
ただ、ヒアリングを重ねていくと、田舎に相続した後に使っていない土地があることがわかったのです。加奈さんによると、直哉さんは将来的に田舎に住む予定はなく、その土地を処分したいと話していたとのこと。これを売却して自己資金とすれば、借入の可能性はグッと広がります。
ここからは直哉さんも巻き込んで、自己資金を作るための土地の売却を進めていくことになりました。
幸いなことに売り出しから数ヶ月で買い手が見つかり、無事に自己資金を準備できたことで、直哉さんの借換えについての事前審査の承認が下りることになりました。
後で分かったことですが、直哉さんが積極的にペアローン解消に向けた手続きを進めようとしなかったのは、仕事が忙しかったという理由だけによるものではありませんでした。直哉さんは、加奈さんからの離婚の要求に合意したものの、2人で相談して建てたセミオーダーの家や、加奈さんのこだわりの詰まったキッチンに思い入れがありすぎて、名義と住宅ローン変更を少しでも遅くしたいと考えていたのでした。
一方、ペアローンと家賃の二重払いがあって負担の大きかった加奈さん。少しでも早く直哉さんに住宅ローンを一本化して離婚を成立させたいと考えており、直哉さんに代わって必要書類を役所ですべて準備しました。
直哉さんの新事業は順調に伸びていました。数年後には事業もさらに拡大し、支店も作って益々繁盛する見込みです。最後まで、「妻にこの事業の繁栄を祝ってもらえないことがとても悔やまれる…」と話していた直哉さんでしたが、渋々ながら借換えの本申し込みを行い、決済(名義と住宅ローン変更)日の段取りが決定。離婚協議へと進んでいくことになったのでした。