自宅の名義を一本化したいエリートサラリーマンからの相談
筆者に相談のメールをくれたのは、夫の萩尾正樹さん(仮名)。共有名義、ペアローンで買った自宅に住んでいるが、離婚が決まったとのこと。正樹さんは筆者に、「共有名義の自宅を自分の名義にできるか」を尋ねてきました。
「資料をみてからではないとわかりませんが、十分にできる可能性があります」と伝えたところ、正樹さんからはすぐに「詳しく話を聞きたい」との返信があり、その週末には筆者の事務所で面談を実施しました。
冬はスノボに…高速のインターチェンジそばに建てたセミオーダーの自宅
萩尾さん夫婦は大手企業の社内の同期同士。入社してから同期の皆で飲みに行ったりしているうちに、意気投合し交際が始まりました。大学時代はそれぞれテニスやスノボとスポーツを楽しんでいた二人は、共通の趣味が多く、自然の流れで5年後に結婚に至ります。
結婚当初からしばらくは賃貸マンションに住んでいましたが、2人が35歳のとき「そろそろ家を建てよう」という話が持ち上がりました。夫婦ともに大手メーカー勤務、正樹さんは37歳にして年収は1,200万円超、妻・杏奈さんもバリバリのキャリアウーマンで、世帯年収は2,000万円を超えています。銀行としてはもっとも好むタイプのお客であり、金融機関からも良い条件でローンの承認を引き出せました。
そうして2人は、冬には夫婦の共通の趣味であるスノーボードを楽しめるよう、高速のインターチェンジ近くに土地を探し、練馬区の新興住宅街の一角にセミオーダーの新築戸建てを購入しました。たった10ヵ月前のお話です。
しかし、引越しをしてから、正樹さんは地方出張が増え、家を空けることが増えました。同時期に杏奈さんも部署異動で仕事が忙しくなり、二人の会話はどんどん減ってしまいました。たまに顔を合わせても口論ばかり。「引越しをしたらたくさんスノボに行こう」と約束していたその年の冬、結局一度もスノボにいくことはありませんでした。
離婚の話を切り出したのは杏奈さんでしたが、2人には子どもがいなかったこともあり、正樹さんもすぐに合意しました。離婚協議もどんどん進み、財産分与も争うことなく決まり、あとは物件の名義と住宅ローンを自宅に住み続ける正樹さん名義に一本化するのみとなりましたが、ローンの借り換えができないという事態に直面し、前に進めなくなってしまったのです。
正樹さんによると、自宅を正樹さん名義に一本化したいという申し出に対しては、1年前に審査をしたすべての銀行に断られ、大手の不動産会社からも良い返事をもらえなかったといいます。
その後、インターネットで調べに調べて筆者のところにたどり着いたとのことでしたが、醸し出している雰囲気からは、あちこちで断られた苛立ちが伝わってきました。実はこのようなケース、エリートサラリーマンに多く見られます。自分のプライドをズタズタに傷つけられてしまい、イライラを抑えきれなくなってしまうのです。