退職後に気づいた妻の「変化」
退職後は、趣味のゴルフを中心に余裕ある生活を楽しんでいたTさん。年に1回は奥様を連れて、夫婦旅行なども楽しまれていました。しかし……。
あるとき、奥様の様子がおかしいことに気づきます。綺麗好きの奥様のはずがゴミを溜めるようになり、気づくと家のゴミ箱からゴミが溢れるようになりました。また、家の鍵も頻繁に失くしてしまい、トイレットペーパーもストックがあるにもかかわらず繰り返し購入。服を入れるはずのクローゼットがトイレットペーパーで埋め尽くされるようになりました。
友人に奥様のことを話し、「それ、もしかして認知症じゃないの?」と言われ合点がいったTさんは、奥様とともに病院へ。検査を受けたところ、友人の予想どおり「アルツハイマー型認知症」との診断を受けました。
アルツハイマー型認知症は症状が進行するため、将来的には老人ホームに入居する必要がありそうです。その場合、月々15~25万円程度かかります。年金は30万円ほど受給予定ですが、そうなると、半分以上が奥様の介護費用として出ていく可能性があります。
晩婚のため、定年後も子どもたちの教育資金がかかったことに加え、住宅ローンを繰り上げ返済したTさん。それに加え奥様の介護費用がかかることになり、老後のことが心配になったTさんは、筆者のもとを訪れたそうです。
FPの助言もむなしく、プライドの高さから「再就職」拒否
厚生労働省の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和3年度末における厚生年金保険(第1号)の老齢給付の受給者の平均年金月額は14万6,000円ほどとなっています。また、夫婦の平均年金受給額は約22万円となっており、年金の受給額が月約30万円あるTさんは一見とても恵まれているようです。
しかし、50代から退職間際まで年収1,000万円を超えていたTさんは、月々の手取りが約70万円と年金受給額の倍以上。収入が多かったため生活水準は高く、その分支出も多い生活を送っていました。
「将来のことを考えると、節約して貯蓄をしておく必要がありそうですね」と筆者がお話ししたところ、Tさんは「そうですね……、しかし友人付き合いもあり、なかなか生活のレベルを落とすことはすぐには難しいかと……」といいます。
支出を抑えることが難しいとなると、年金のほかに老後の生活費を稼ぐ必要がありそうですが、これまで上場企業で管理職をしていたTさんはコンビニのバイトや警備員の仕事には抵抗があるそうです。