大手企業であっても、なかには大きな赤字を出しながらも収益を上げ続けられるケースがあります。一体なぜそのようなことが成り立つのでしょうか? 答えは本業以外の副業にあるようで……。本記事では、融資の教科書製作委員会の著書『現役&元銀行員が本音で教える! 初心者も経験者も不動産投資をはじめる前に読みたかった 融資の教科書』(ごきげんビジネス出版)より、不動産投資の融資、企業が行う不動産投資について解説します。
年間赤字額「朝日新聞・120億円」「SAPPORO・33億円」でも…企業が儲けられるカラクリ【現役・元銀行員が解説】

融資を使わずに成長できる不動産投資家は存在しない

融資を使わないと、不動産投資の規模拡大スピードは非常に遅くなります。たとえば、1,000万円貯金して1,000万円の物件を購入、また1,000万円貯金して1,000万円の物件を購入……。これを繰り返すイメージです。1,000万円の物件を買うのにも数年かかります。

 

また、物件価格1,000万円、利回り10%で購入しても、年間収入は100万円です。近年流行りのFIRE(Financial Independence, Retire Early:経済的自立と早期退職)を考えている人で、「最低でも年間500万円はほしい」と思うなら、利回り10%の物件を5つ購入しなければなりません。つまり、現金5,000万円を貯めないと脱サラできないわけです。現金5,000万円を貯めるのに、何十年かかるでしょうか。

 

そのように考えると、不動産投資の世界では、融資を使うことにより圧倒的なスピード感で規模を拡大できます。

 

年間500万円をつくろうと思えば、1,000万円の自己資金を元手に、5,000万円で利回り10%の物件を1つ買ってしまえば、収入的には終了です。もちろん、返済などもあるので、手残りが500万円になるわけではありませんが、現金だけでの購入と比べて、スピードは遥かに速いといえるでしょう。だからこそ、1,000万円や2,000万円の規模ではなく、レバレッジを効かせて5,000万円、1億円に取り組む人が多いのです。

 

銀行が不動産投資家に融資を勧めるワケ

銀行の支店ごとのノルマは50億円や100億円が当たり前なので、1,000万円の融資をいくつ積んでもノルマ達成は困難になります。そのため、不動産などの有担保で比較的安全な投資先に高額な融資をしたいと思っているわけです。成長している不動産投資家は、そうした銀行のニーズを上手に捉えているといえます。

 

銀行としても、「利益を多く出して、滞りなく返済してくれる人にお金を貸したい」と思っています。前述したように、1億円の融資をすると1億円の不動産を買ってくれるので、銀行からしても安心です。

 

「居酒屋開業資金の500万円の融資」と「不動産投資用の1億円の融資」

余談になりますが、ここで実例を紹介しましょう。ある日、「脱サラをして居酒屋を開きたいので、500万円の運転資金を貸してほしい」という相談をもった方が来店。事業計画書や個人の確定申告、お店の間取り、イメージ図、どのような人がどれだけ来るので売上はこのぐらいになるなど、資料がキレイにまとめてありました。

 

面談は資料のおかげかスムーズに進みましたが……結論をいうと、この融資はお断りしました。なぜなら、その事業の成功する未来が見えなかったからです。極端にいうと、融資した500万円ですら回収できるかわからなかったからです。

 

次の日、不動産経営者さん、つまり大家さんが来られ、「1億円の不動産の融資をしてほしい」ということで、購入したい物件の概要書や登記簿などを確認し、不動産自体の評価も申し分なかったため、後日に1億円の満額融資を実行しました。

 

この違いがわかるでしょうか。もちろん、お二方の自己資金や属性(勤務先・年収などといった経済的・社会的背景)などは何もかも違いますが、不動産はそれだけ取り組みやすく、金額も大きいため、金融機関のやる気も上がるのです。居酒屋を経営するために500万円の融資を求める人と、1億円の物件を買うために1億円の融資を求める人を比較したとき、銀行は後者を「安全な投資先」と見なします。

 

たとえ居酒屋は500万円という小さな金額でも、飲食店は倒産リスクが高いため、不良債権になる恐れもあります。一方、不動産は1億円の融資をしても1億円分の土地と建物が残るので、仮にオーナーが破産したとしても1億円を回収できる可能性が非常に高いです。そのため銀行側からすると、飲食店や工場などの運転資金に貸すくらいなら、金額が大きく土地と建物が残る不動産にお金を貸したいと思うのです。

 

コロナ禍になっても家賃相場はほぼ変わりませんでしたが、居酒屋をはじめとする飲食店は甚大なダメージを受けたところも多くあります。そういったことからも、不動産がいかに安定したビジネスなのかがわかります。