これから不動産投資を始めようとする融資希望者を、融資のプロたちはどう評価するのでしょうか。本記事では、融資の教科書製作委員会の著書『現役&元銀行員が本音で教える! 初心者も経験者も不動産投資をはじめる前に読みたかった 融資の教科書』(ごきげんビジネス出版)より、実際にあった査定の具体例を解説します。今回は不動産経験ゼロの東証プライム上場会社に勤める年収800万円、40歳サラリーマンの例です。
年収800万円の40歳サラリーマン「経験はゼロ、自己資金1,000万円で不動産投資を始めたい」…実際の融資面談結果【現役&元銀行員が解説】

年収800万円・自己資金1,000万円のサラリーマン、経験ゼロだが不動産投資を始めたい!

【プロフィール】

和久田弘さん(仮名)

40歳

東証プライム上場会社勤務

年収800万円

家族構成:4人

資産:マイホームと自己資金1,000万円

 

一棟ものを購入したいが不動産経験はゼロ。不動産仲介業者からの紹介でやって来た。スーツを着用。

 

Aさん(50代・都市銀行)の回答

→「業務提携の不動産ローンで審査します」

 

【Aさんの略歴】

一般店と都心店で融資課長12年、法人営業7年。取引額約300億円、案件数800件以上。

 

Bさん(40代・地方銀行)の回答

→「購入希望物件の価格によって変わりますが、稼働率が70%程度に下落しても生活余剰資金で返済可能な物件であれば、前向きに検討します(新規なので少し保守的に見ます)。さらに大きい物件なら、奥さまの属性を確認し、別収入があれば連帯保証人として取り込む方向でヒアリングを進め、上記同様に本人+奥さまの生活余剰資金で返済可能な物件であれば前向きに検討します」

 

【Bさんの略歴】

営業課長1年、融資課長1年、法人営業15年(内、不動産業者専門部隊2年、法人アウトバウンドコールセンター2年)。リスケ先に対し他行含む1本化で正常債権へ転換。温泉掘削プロジェクトに20億円融資、分譲マンションプロジェクト多数。全店表彰で金賞3回。取引額120億円程度、案件数200件以上。

 

Cさん(40代・信用金庫)の回答

→「アパートローンなどで検討できそうです」

 

【Cさんの略歴】

法人融資営業7年、経営企画部3年半。経営企画部で金庫全体の中期計画策定、新店出店の計画、融資リスクの管理、財務局、日本銀行との交渉など。預金店舗から融資店舗に切り替えた実績があり。取引額100億円程度、案件数200件以上。

 

Dさん(30代・信用金庫)の回答

→「不動産仲介業者の紹介案件なら基本的に構えて受けます。しかし経験はないとのことで、ハードルは高いでしょう」

 

【Dさんの略歴】

支店3年、本店営業部1年、法人営業部(現在)5か月。同新規案件を取得数が同期で1番。取引額約50億円、案件数50件以上。

 

Eさん(20代・信用金庫)の回答

→「経験は重視するので、どれくらいの金額かにもよりますが難しいと思います」

 

【Eさんの略歴】

法人営業2年半。融資商品内容を精査し、お客さまにいちばん合うかたちで財務改善を行うことができた実績あり。取引額約10億円、案件数7件以上。

 

Fさん(40代・信用組合)の回答

→「不動産の経験は皆無とのことですが、知識はあるのかを確認します。不動産仲介業者にも物件内容を確認します」

 

【Fさんの略歴】

法人営業10年。融資部門成果TOP3以内四度獲得。取引額90億円程度、案件数250件以上。

元・現役銀行員の回答まとめ

年収の高さがあることと、また不動産業者からの紹介のため、基本的には前向きな方向で検討してもらえそうです。しかし、やはり経験のなさ、知識のなさに不安を抱く金融機関も多く、「仲介業者の言いなりになっていないか」を気にしている担当者もいました。

 

筆者からのアドバイス

不動産投資を始める前に
必ず読むべき!
融資のすべてがわかる入門書
 

 

基本的には自己資金があり、属性もよいため、物件次第では取引が十分可能でしょう。年収が高いと、生活余剰資金で返済可能かどうかを見ることが多いため、自分の生活余剰資金がいくらになるのかを把握する必要があります。生活余剰資金とは文字どおり、通常の生活を行ったあとに残る自己資金のことです。


たとえば、家族3人で年間生活費400万円かかるとし、そこに住宅ローンやカーローンの返済を入れると、手残りがいくらになるのか、これを生活余剰資金として計算します。物件に空室が出たとしても、生活余剰資金で支払いが可能かどうかを判断するということです。


不動産仲介業者についてですが、宅建免許番号が(2)以上になっている業者であれば、金融機関にも比較的安心してもらえる可能性が高いです。(〇)の中の数字は宅建免許の更新回数をあらわし、5年に一度の更新であるため、更新した回数に1を加えた数字が記載されます。金融機関から見て、信頼できる業者なのか、すでに取引をしたことがあるのかどうかなど、詳細に聞いておきましょう。

 

※本記事は『現役&元銀行員が本音で教える! 初心者も経験者も不動産投資をはじめる前に読みたかった 融資の教科書』(ごきげんビジネス出版)一部を抜粋し、THE GOLD LINE編集部が本文を一部改変しております。