物件売却時の金融機関からの反応
金融機関は、物件の売却に対して基本的によく思いません。なぜなら、金利を得られなくなるからです。しかし、ある程度は納得してくれる金融機関もあります。それは、売却益があまりにも出てしまうときと、一括返済時の違約金が発生するときです。
たとえば、1億円の物件が2億円で売れる場合、銀行としても事業が成功して、規模が拡大するのは喜ぶべきことではあります。とはいえ、それで取引がなくなってしまうと、金融機関にとってはいいことではありません。ですから物件を売るときには、次の融資対象物件を持っていくのがオススメです。これは借り換えのときも同じことがいえます。
「物件を売却してしまいますが、そのかわり、この物件を御行で借りられたらと思って……」「借り換えはしますが、反対にこちらの物件を御行で借り換えをします」など、できる限り付き合いがなくならないようにすることが、金融機関としてはうれしいのです。
金融機関は購入した物件を売却するという想定がない
また、今までの話の業種はあくまで不動産賃貸業であり、宅建免許を掲げた不動産仲介業ではありません。したがって、金融機関は購入した物件を売却するといった想定がないのです。賃貸業や大家業は、宅建免許がない人のことを指すわけですが、そもそも不特定多数に、継続的に不動産の売買をする方は宅建業法上違反にあたるため、そのような事業者に金融機関は融資ができません。
つまり、「この物件は買ってすぐ売ったら、1億円くらい利益が出るんです」などと決して言ってはいけませんよ。なぜなら、銀行の収入は金利であり、そのような右から左への商売は宅建業法上違反に該当するためです。売却する場合は、「コロナで経営が悪くて……」などと説明すると、「それなら仕方ないですよね」となりますし、もしくは前述したように「大きな利益が出るので売らなければ損ですよね」と伝えると、「事業規模の判断ですね。わかります」となります。
しかし、大して利益もないのに売る、大して金利が下がるわけでもないのに借り換えをする。これは避けるべきです。これには金融機関も納得できないので、「経営者としての力がない」「次は融資をしない」といった姿勢になってしまいます。
とはいえ、どうしても売却せざるを得ない状況もあるはずです。むしろ、大きな利益が出るのに売らないのは、経営者としての判断を疑われます。また、購入時の手数料が増え、売却をすることは金融機関側も実際は把握しています。購入後、すぐに転売するのは宅建業法的にNGですが、持っているうちに売りたくなることがあるのは金融機関もわかっているのです。だからこそ、コベナンツという融資手数料を取ったり、返済時の違約金を設定したりして、金利がもらえなくなっても経営が成立するようにしているといえます。
※本記事は『現役&元銀行員が本音で教える! 初心者も経験者も不動産投資をはじめる前に読みたかった 融資の教科書』(ごきげんビジネス出版)一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。