時代と共に結婚観は変わり、昨今は「子どものいない夫婦」が増加傾向にあります。子どもの養育費・教育費の心配がないなど経済的に余裕がある一方で、配偶者が亡くなったときに気を付けなければならないことがあります。みていきましょう。
〈子のいない夫婦〉老後は「退職金4,000万円」で暮らしていたが…81歳夫の死後、78歳妻が巻き込まれた衝撃事件「住む家を奪われるとは」 (写真はイメージです/PIXTA)

「この家を相続する権利がある!」甥・姪の突然の主張に妻は…

81歳で亡くなった夫、残された78歳妻。夫の兄弟姉妹は亡くなっていたが、普段、ほとんど交流のない甥や姪が、突然「遺産をよこせ!」と主張……実はよくあるパターンです。

 

甥や姪が相続人になるかもしれない……このようなことを知らず、なんの相続対策もしていない子どものいない夫婦は多く、甥や姪の主張を聞いて、初めて事の重大さを認識するのです。

 

裁判所『司法統計年報 家事事件編』によると、2022年、裁判にまで発展した遺産分割事件は1万2,981件。遺産分割事件のうち認容・調停成立(分割しないを除く)は、6,857件で、遺産1,000万円以下は2,296件。遺産が多いから相続争いが起きるわけではなく、「もらえるなら、少しでももらいたい」という人の欲で争いは起きるのです。

 

また「遺産が不動産だけ」というケースは分割しづらいこともあり、トラブルになりがち。認容・調停成立6,857件のうち5件に1件は「遺産は不動産のみ」でした。たとえば現金はほとんどなく、遺産といえるのは夫婦で過ごした自宅だけという場合。「この家だって、いくらかもらえる権利が私たちにある!」と甥や姪が主張してくることもあります。結果、裁判沙汰となり「住む家が奪われてた……」といった、ドラマみたいなことが起きることも十分に考えられるわけです。

 

子どものいない夫婦の場合、生前に「財産をすべて配偶者に相続させる」という遺言書を作っておくことで、すべての財産を配偶者が相続することができます。注意すべきは、ほかの相続人から最低でもこの割合だけは遺産を取得できるという遺留分を請求されることがあること。ただ兄弟姉妹については遺留分がないので、親が亡くなっているなら、遺言書を作成しておくだけで長年付き添った配偶者のその後の生活を守ることができます。