時代と共に結婚観は変わり、昨今は「子どものいない夫婦」が増加傾向にあります。子どもの養育費・教育費の心配がないなど経済的に余裕がある一方で、配偶者が亡くなったときに気を付けなければならないことがあります。みていきましょう。
〈子のいない夫婦〉老後は「退職金4,000万円」で暮らしていたが…81歳夫の死後、78歳妻が巻き込まれた衝撃事件「住む家を奪われるとは」 (写真はイメージです/PIXTA)

厚生労働省によると会社員の平均年収は、30代前半で男性495万円、女性390万円。30代後半で男性560万円、女性411万円。40代前半で男性600万円、女性423万円。夫婦の収入を合わせれば800万~1,000万円になりますが、妊娠・出産で一時的でも妻の収入が減少することを考えると、家計に余裕があるとはいえません。さらに夫だけの収入になることも十分に考えられます。そのような状況で、妻や子を支えられるものなのか、不安がよぎります。それであれば「夫婦だけの結婚生活というのも悪くない」と考える夫婦も多そうです。

子どものいない夫婦の老後は?

子どものいない夫婦。仮にふたりとも会社員を続け、60歳の定年まで働いたとしたら。勤続年数や学歴などで異なりますが、退職金は大学・大学院卒で1,983万円、高校卒(管理・事務・技術職)で1,618万円、高校卒(現業職)で1,159万円(総務省統計局『平成30年就労条件総合調査』)。

 

お互い大卒であれば、退職金は4,000万円近くになります。さらに65歳から受け取れる年金額は、厚生労働省の調査によると、男性で平均17万円、女性で10万円。元会社員夫婦で計27万円は見込めます。悠々自適な老後は確定的です。

 

ただどんなに幸せな夫婦生活も、永遠に続くことはありません。2022年、日本人の平均寿命は男性 81.47歳、女性87. 57年。およそ50年ほどでふたりの結婚生活は幕を閉じることになります。夫婦の平均で考えると、平均寿命の81歳で夫が亡くなったあとに残される妻は78歳。およそ10年ほどのおひとり様の生活が待っています。子どものいない夫婦であれば、経済的には問題ないでしょうか。

 

ただ子どものいない夫婦だからこそ、夫(妻)が亡くなったときに起きやすいトラブルがあります。遺産相続争いです。子どものいない夫婦の場合、民法で定められた被相続人の財産を相続できる人である法定相続人は、親がいれば「配偶者と親」、親や祖父母がすでに亡くなっていれば「配偶者と兄弟姉妹」となります。さらに兄弟姉妹が亡くなっている場合は、代襲相続となり「甥や姪」が相続人となります。