(※画像はイメージです/PIXTA)

政府は、ガソリン価格の高騰が続いていることを受け、2023年9月に期限を迎える「燃料油価格激変緩和補助金」を10月以降も延長する方針を固めました。他方で、ガソリン価格には1リットルあたり53.8円徴収されている「ガソリン税」を引き下げる動きはみられません。その背景には複雑な歴史的経緯と事情があります。本記事で解説します。

ガソリン価格は「補助金」で抑えられているが…

ガソリン価格は、2022年1月からの「燃料油価格激変緩和補助金」によって抑えられてきています。これは、石油元売事業者・輸入事業者を対象として、価格上昇を抑える原資に充ててもらうために補助金を支給する制度です。

 

資源エネルギー庁の資料によれば、抑制幅の最大は2022年6月20日と同年7月11日の「1リットルあたり41.9円」です(6月22日は215.8円→174.9円、7月11日は214.6円→172.7円)。しかし、補助金で抑えられた額以上に、「ガソリン税」等の税金がガソリン価格を大きくしています。

ガソリン1リットルあたりの価格に含まれる「税金」

ガソリン1リットルあたりの価格には、以下の税金が含まれています。

 

【ガソリン1リットルあたりの価格に含まれる税金】

・ガソリン税:53.8円(揮発油税48.6円、地方揮発油税5.2円)

・石油石炭税:2.04円

・温暖化対策税:0.76円

 

このうち最も大きいのがガソリン税(揮発油税と地方揮発油税)です。

 

2023年8月21日時点でのガソリン価格は1リットル181.9円(補助金により13.6円抑制されている)なので、そのうち31.1%をガソリン税等が占めています。また、ガソリン価格全体に、10%の消費税がかかります。消費税込みの価格に占めるすべての税金の占める割合は37.4%です。

ガソリン税が「1リットル53.8円」になっている経緯

ガソリン税が「1リットル53.8円」になっているのには、複雑な歴史的経緯があります。ガソリン税の本来の税率(本則税率)は「1リットル28.7円」です。しかし、「特例税率」の適用によって、「1リットル53.8円」になっているのです。

 

この特例税率は2010年以前の「暫定税率」に由来しています。1974年に道路整備の財源が不足しているという理由で「1リットル53.8円」の「暫定税率」が適用されました。それ以来、暫定税率がずっと適用されてきました。そして、2010年以降の法改正により「特例税率」へと実質的に引き継がれ、「1リットル53.8円」のまま現在に至っているのです。

 

なお、法改正の背景には、「道路特定財源の一般財源化」があります。ガソリン税はもともと、使い道が道路の整備・維持管理に限られる「道路特定財源」の一つでした。それが2009年に、使い道に制限のない「一般財源」へと移行されたのです。

 

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