「保険を見直すなら“ねんきん定期便”を持ってきて」…FPが56歳夫婦にした“謎のお願い”の理由【FPが解説】

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「保険を見直すなら“ねんきん定期便”を持ってきて」…FPが56歳夫婦にした“謎のお願い”の理由【FPが解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

生命保険の見直しをしようとFP事務所を訪ねた田淵夫妻(仮名)。夫の章さんは60歳、妻の綾子さんは56歳で、2人のお子様はすでに成人し独立しています。相談を受けた株式会社アセット・アドバンテージ代表取締役の山中伸枝ファイナンシャルプランナーは、田淵夫妻に「ねんきん定期便」を持参するようお願いしました。そのワケとは? 詳しくみていきましょう。

「保険の見直し」における注意点

生命保険は通常、遺された家族の生活を維持する目的で加入しますが、「相続税対策」として生命保険を活用することもできます。これは、生命保険金は他の相続財産と切り離され、「500万円×法定相続人の数」で出た金額分は非課税であるためです。

 

田淵夫妻の場合、それぞれが亡くなった場合の法定相続人の数は「配偶者」と「子ども2人」の3名ですので、500万円×3=1,500万円が生命保険の非課税枠となります。もちろん他の財産の大きさによっても変わってきますが、生命保険を見直す際に相続税対策を考慮に入れるかどうかは、検討すべき項目のひとつです。

 

章さんは筆者からここまでの話を聞いて、感心したようにこうおっしゃいました。

 

「今まで保険の相談といえば、保険商品の説明があり、保険料がいくらかといった話が中心だったけど、“ねんきん定期便から遺族年金を計算する”なんて方法は面食らいましたよ。しかし改めて聞くと、生きているあいだも亡くなった場合も保障があるなんて、年金って本当にありがたい制度ですね」。

 

全員が田淵夫妻のようにはいかない

たしかに年金は非常にありがたい制度ですが、働き方などによって給付額が1人ひとり異なるという点には注意が必要です。

 

たとえば、章さんは会社員生活が長いため奥様に手厚い遺族厚生年金が支給されますが、自営業の方の場合は厚生年金に加入しないため、遺族厚生年金はありません。代わりに「寡婦年金」という制度がありますが、婚姻期間に下限が設けられていたり、受け取ることのできる金額や期間も限定的だったりで、“手厚い”とは言い難いものです。

 

したがって、老後の暮らしを考える際には、ぜひご自身のねんきん定期便を持参したうえで専門家に相談していただきたいと思います。

年金の保険機能、3つ目は…

ここで綾子さんから、FPに質問がありました。「最初に年金の保険機能は3つとおっしゃっていましたが、あと1つは何なのでしょうか?」

 

うっかりしていましたが、年金の非常に重要な保険機能の3つ目は、「障害年金」です。これも“万が一の保険”といえますが、重い障害を負った際に年金が支払われる仕組みになっています。障害等級が1級であれば約100万円、2級であれば約80万円が支給され、もし厚生年金加入中の障害であれば、ここに障害厚生年金が上乗せされます。

 

「障害者の方への金銭的サポートは、なんとなく福祉制度が担っていると思っていましたが、年金なんですね」と奥様。筆者は「おっしゃる通りです」と答え、こう続けました。

 

「年金は、保険料を納めるという義務を負うと同時に、給付を受ける権利を得る『共助の制度』なんです。たまに親が大学生のお子様の年金保険料を支払わずにそのままにしているというケースがありますが、もしその状況でお子様が事故に遭い障害を負っても、保障がまったく出ないということになりかねません。ですから、年金保険料の支払いは忘れずに行わないといけません」

 

これを聞いた綾子さんはハッとしました。「あっ、そういえば次男が20歳になったのですが、家に年金のお知らせが届いていたかもしれません。あれ、私どうしたかしら?」

 

焦る奥様に、筆者はこう答えました。

 

「学生であれば、『学生納付特例』の申請を行い、保険料を後払いにすることもできます。こちらは就職したら保険料を支払う仕組みです。また、お父さん(章さん)が息子さんの保険料を支払ってあげることもできます。この場合、支払った保険料はご主人の社会保険料控除になります。いずれにしろ、この機会に『年金には3つの保険機能がある』ということを息子さんにも教えてあげてください」

 

病気や死亡時など万が一の備えと思った際、私たちはついついテレビCMなどでなじみのある「民間保険」を考えてしまいます。しかし、まずはすでに“強制加入”している「公的保険」の給付額を確認することを習慣にして見てはいかがでしょうか。

 

 

山中 伸枝

株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役

 

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本記事は、株式会社クレディセゾンが運営する『セゾンのくらし大研究』のコラムより、一部編集のうえ転載したものです。