「酒は百薬の長」だが…適量はどれくらい?
「酒は百薬の長」とも言われます。その一方、「酒はさまざまな疾患の危険因子」でもあります。いったい、どれくらいの酒量が健康上、最適なのでしょうか?
「ほどほどの飲酒」は、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを低下させる
ALDH2非活性型あるは不活性型の日本人は、いったい、どれくらいお酒を飲むべきでしょうか?
一般的には、「お酒をほどほどに飲む人」のほうが、「まったく飲まない人」あるいは「多飲する人」よりも、心筋梗塞や脳梗塞などの発症率が低くなるため、死亡率が低くなると言われています。
適度な飲酒は血栓形成を促すタンパク質「フィブリノーゲン」の値を低くするだけでなく、血圧を一時的に下げたり、血液中のHDLコレステロールを増やしたりする効果があることもわかっています。この事実は、米国や英国、イタリア、日本、中国など世界各国で観察されています。
長期的な飲酒は、じわじわと心房細動の発症リスクを上昇させる
しかし、長期的な飲酒は不整脈の危険因子となることもわかっています。
2014年、ベースライン時に心房細動のない男女79,019人を対象として行われた研究(※4)では、週1杯未満の現飲酒者と比較して、心房細動が発症するリスクは、週1~6杯で1.01倍、週7~14杯で1.07、週15~21杯で1.14、21杯では1.39と、量が増えるにつれて増加しています。
なぜ、飲酒が心房細動の危険因子になるかというと、アルコールの分解産物であるアルデヒドが心筋に傷害を加えることで、心臓が変性し、心房細動が発生するからなのです。
それでは、お酒の適量とはどの程度なのでしょうか。日本人を対象にした研究によると、男性については1日当たり純アルコール10~19gで、女性では1日当たり9gまでが、最も死亡率が低く、1日当たりアルコール量が増加するに従い、死亡率が上昇することが示されています。
わかりやすく缶ビール500ccにたとえると、男性の場合は1本でちょうどよい量ということになります。
ただしこれは、通常のアルコール代謝能を有する日本人を対象とした数値であり、日本人の約半数はALDH2が非活性、あるいは不活性であるため、「お酒を飲んだらすぐに顔が赤くなる」「悪酔いしやすい」という場合には、この数値よりも控えめにした方が良いでしょう。
暑さが続き、お酒の美味しい時期ではありますが、ご自身の体質に合わせたお酒の飲み方を心がけてみてください。
※1.参照サイト:アルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)の構造・機能の基礎と ALDH2遺伝子多型の重要性 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjh/71/1/71_55/_pdf
※2.https://www.kirinholdings.com/jp/impact/alcohol/0_1/proper/criteria/
※3.食道がん、頭頸部がんのリスクとアルコール代謝酵素の関連に関する研究(Yokoyama A, et al: Esophageal cancer and aldehyde dehydorogenase-2 genotypes in Japanese males. Cancer Epidemiol Biomakers & Prev 5:99-102, 1996)(https://www.ncc.go.jp/archive/kaihatsu/mhlw-cancer-grant/2000/focused1212.html_)
※4.Alcohol consumption and risk of atrial fibrillation: a prospective study and dose-response meta-analysis(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25034065/)
※参照 心房細動の原因(https://www.tokyo-heart-rhythm.clinic/medical-content/contents/part-1/chapter-2/)
桑原 大志
東京ハートリズムクリニック
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