42歳の国家公務員…ギリギリまで融資を受けた〈35年後〉に待つ、ギリギリの生活
人事院『令和4年国家公務員給与等実態調査』によると、国家公務員(行政職俸給表(一)、平均年齢42.7歳)の平均給与は月40.5万円。ボーナスは4.5ヵ月分とすると、平均年収は670万円ほどになります。年収倍率10倍であれば6,700万円程度の不動産でも銀行は「貸しますよ」といってくれるわけです。しかもエリートとされる国家公務員であれば、なおさら。「フルローンもいけりゃいますよ」などという営業を受けることもあるでしょう。
たとえば、平均的な給与の42歳、エリート公務員が年収倍率10倍、しかもフルローンで新築マンションを買ったとします。ほかの条件は以下のとおり。
・物件価格/借入額:7,000万円
・返済方式:元利均等
・金利:0.5%
・返済期間:35年
利息分は631万7,887円で総支払額は7,631万7,887円。月々の支払額は18万1,709円、返済負担率は32%程度になります。ローン負担率は余裕のある返済が叶うという適正値を超え、片働きだと生活は相当苦しくなります。「うちは共働きだから大丈夫」などと理由をつけて、希望通りのマイホームを実現することになるのです。
問題はそれから35年後。ローンを払い終える70代。予定通りなら77歳となる年齢。
昨今は住宅購入年齢が上がっているので、そもそも完済年齢が70代というのは珍しくありません。しかし70代というと、年金生活をスタートさせている年齢。それまで住宅ローンを抱えるのは不安なので、年金受給の始まる65歳までに完済しようと、繰り上げ返済をするケースが多いようです。
しかしギリギリいっぱいまで融資を受けた公務員の場合、繰り上げ返済しようにもできず、さらに重いローン負担で資産形成も思うように進められず……そして77歳。ローン地獄から解放されたけど残っているのはマイホームだけ。貯蓄に余裕もなく、年金だけで何とか生活していく毎日……というパターンに陥るわけです。
誰からも羨望の眼差しが注がれるエリート公務員。しかし口車に乗せられて、希望以上に豪華なマイホームを実現させた未来は、あまり羨ましいものではなく、少々寂しいものになります。やはり余裕ある老後を望むなら、マイホームは身の丈程度のものが丁度いいといえそうです。