老後に必要のは「2,000万円」?それとも「800万円」?
――老後、どれくらいのお金が必要でしょうか?
何度も繰り返される質問ですが、その回答で最も有名なのは「夫婦で2,000万円」というものでしょう。いわゆる「老後資金2,000万円不足問題」に端を発したもので、いまや「老後に向けた貯蓄の目標金額」も「2,000万円」と回答する人が多くなっています。
一方で最近言われているのが「夫婦で800万円あれば十分」という主張。そこには1,400万円もの差がありますが、これはどういうことなのでしょうか。
これらの主張の根拠となっているのが、総務省が発表する『家計調査 家計収支編』。「2,000万円問題」の際に根拠とされたのは、その2017年の「ともに65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の家計収支。実収入が20万9,198万円に対し、実支出が26万3,717円。1ヵ月で5万4,519円不足となり、30年間の不足額として1,962万6,840円≒2,000万円とされたのです。
そして「800万円不足」の主張の根拠となっているのが2022年の同調査。実収入24万6,237円に対し、実支出は26万8,508円で、1ヵ月の不足額は2万2,271円。30年間の不足額は801万7,560円≒800万円というわけです。
◆2018年
実収入:22万2,834円/実収入:26万4,707円/30年間の収支:▲1,507万3,920円
◆2019年
実収入23万7,659円/実収入:27万0,929円/30年間の収支:▲1,165万3,250円
◆2020年
実収入:26万6,056円/実収入:26万3,662円/30年間の収支:86万1,840円
◆2021年
実収入:23万6,576円/実収入:25万5,100円/30年間の収支:▲666万8,640円
◆2022年
実収入:24万6,237円/実収入:26万8,508円/30年間の収支:▲801万7,560円
同じように過去5年分の同調査結果を振り返ると、国民1人あたり10万円の給付があり、かつ、消費が冷え込んだ2020年に限れば収支はプラスという結果に。「老後資金、いくら準備すればいい?」の問いに明確に答えるのは難しそうです。