DeFiが抱えるリスクによってリーマン・ショックが再来する?
ここではカーブ・ファイナンスの事件を大きく取り上げましたが、DeFiにおけるハッキング事件はこれまでに度々起きています。
DeFiは、特定の企業やシステムに頼ることなくプログラムベースで様々な取引を効率良く執行できることに優位性がありますが、プログラムに脆弱性があった場合に不正が起こりやすいという大きな問題を抱えています。
本来であればブラックボックスとなっているシステム構造がオープンソースとなっていることも攻撃を受けやすい要因となっています。
こうしたDeFiが抱えるリスクは、単なるハッキング事件にとどまらず、2008年に全世界を揺るがしたリーマン・ショックのような大規模なシステミックリスクを引き起こす可能性を秘めています。
DeFiでは、特定のトークンを担保としたレンディングやレバレッジ取引が行われ、これらはサービスを横断して行われることがあります。
カーブ・ファイナンスのCRVトークンもアーベ(Aave)やフラックス・ファイナンス(Frax Finance)といった他のレンディングサービスで担保資産として活用されており、複数のサービスにわたって取引されています。
したがって、価格の急落やハッキングなどの問題が発生した場合、ひとつのサービスで発生するトラブルが他のサービスにも影響し、市場全体に深刻な打撃を与える恐れがあります。これは、リーマン・ショックが発生した当初、証券化された住宅ローン商品の拡散によって引き起こされた連鎖的な倒産と類似しています。
リーマン・ショックの際、多くの投資家が複雑な証券化商品のリスクを完全には把握していなかったことが大きな暴落の一因となりました。現在のDeFiにおいても多くのサービスやトークンがリスクの見えないまま広まっている可能性があります。
自己責任と言ってしまえばそれまでですが、過去の失敗による教訓を活かし、DeFiにおいてもサービスごとのセキュリティやリスク管理、情報開示などの対策を講じることが重要です。
DeFiは、未来の金融としての将来性やイノベーションが期待される一方で、リーマン・ショックのような連鎖的なリスクが潜んでいることも理解しなければなりません。暗号資産市場において未曾有の危機を繰り返さないためには、投資家、開発者、そして規制当局が一体となって市場環境を整備していく必要があります。
松嶋 真倫
マネックス証券 マネックス・ユニバーシティ
暗号資産アナリスト