勤続38年の大卒サラリーマンが受け取る退職金額は、平均2,243万円。「自分へのご褒美に」と少しは贅沢してみたくなる気持ちはわかりますが、使い過ぎは禁物。現役時代と同じペースでお金を使い続ければ、退職金はあっという間に底をついてしまいます。そして、使いすぎてしまった分を「投資」で取り戻そうとするのは最悪の選択。実際に、その投資に失敗して「老後破産」という結末を迎える人も珍しくありません。シニアの投資が大失敗に陥るいくつかのパターンと、安心の老後を迎えるためのポイントをみていきます。
退職金2,200万円を受け取った60歳・元大卒会社員「お金、使いすぎちゃった。投資で取り戻そう」…泥沼に陥る〈3つのパターン〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

現役時代と同じペースでお金を使い続けると…

激動の会社員人生にいったん終止符を打ったばかりの人が2,000万円もの退職金を受け取れば、趣味だった旅行に毎月出かけたり、現役時代に夢見ていた高級外車を購入したりと、「頑張った自分へのご褒美」を考えたとしてもおかしなことではありません。

 

しかし、退職金として受け取る2,243万円というのは、平均的な大卒サラリーマンの引退時月収の約45ヵ月分。総務省『家計調査 家計収支編』によると、年収750万~800万円世帯の月の消費支出は30万8,740円ですから、現役時代の生活水準を維持しようとすれば、6年ほどで使い果たしてしまう計算になります。

 

たとえば高級外車の購入に1,000万円単位のお金を使った場合、退職金は年金支給が始まる前に確実に底をつきます。

 

そうなるといよいよ現実的になってくるのが「老後破産」。

 

日本弁護士連合会『2020年破産事件及び個人再生事件記録調査』によると、破産債務者のうち60代が16.3%、70代以上が9.3%。つまり、破産という最悪の結果を迎えてしまう人の4分の1は高齢者なのです。

 

そして同調査では、老後破産に至る理由として「投資」の失敗によるものが多いとも指摘されています。

 

贅沢を続けたことで預金残高がみるみる減り、焦ったシニアがハイリスクな「投資」に挑戦して大失敗をおかす様子が目に浮かびます。そんなシニアたちは、どんなパターンで泥沼に陥るのでしょうか。以下にみていきます。

 

① 営業マンのセールストークを鵜呑みにする

退職金の受け取り口座がある銀行から、「現金で置いておくよりは、リターンが良いですよ」「いまは相場が良いんですよ」などのセールスを受け、銀行員の提案を鵜呑みにして大きな損失を被るケースが後を絶ちません。

 

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]』(令和3年)によると、投資において「元本割れ」の経験がある人は37.9%。その理由をどう分析するか聞くと、「相場の変動によって元本割れするリスクを金融機関が十分に説明しなかったためだ」が4.7%、「著しい誤解を招く広告、勧誘を金融機関から受けたためだ」が3.6%。また「金融機関の説明」を理由に挙げている人は、60代では6.6%となっています。

 

どんなにセールスが魅力的でも、自分でリスクを理解できないのであれば投資をしないのが鉄則です。

 

② 全額を1カ所に投資する

前出の調査によると、金融商品の選択基準として「利回りが良いから」を挙げている人は60代では16.4%、70代では15.8%に上ります。多くの人が余裕資産で高利回りの商品を購入していると考えられますが、上のように「いまは相場が良い」などと勧められるがまま、持ち金すべてをリスク商品につぎこむケースも少なくありません。

 

投資の鉄則は「分散」。手元にある現金を1カ所に投じるのではなく、アセットアロケーションを意識して、株式や債券、投資信託といった複数の資産に分けて運用・管理を行うことが重要です。

 

③ 一発逆転をめざしてハイリスクな商品に投資する

引退後に贅沢な消費を続け、「退職金が大きく減ってしまった」「年金の支給が始まるのはまだ先だ」となると、焦るのは当然です。現役時代に資産運用の経験が十分でない場合、株の信用取引やFX、暗号資産などのリスク商品への投資で使いすぎてしまった退職金を取り戻そうとすることもあるかもしれません。

 

しかし、十分な金融知識を持たないまま、一発逆転をめざしてハイリスクな投資に挑戦することほど危険なことはありません。使いすぎた分を取り戻すばかりか、さらに傷口を広げてしまう結果にもなりかねないでしょう。