年金は原則65歳から受け取れますが、希望すれば60歳まで繰り上げたり、75歳まで繰り下げたりすることも可能。特に年金額が増額される繰り下げ受給はメリットが大きいといわれていますが、すべての人におすすめできるものではないという意見も。みていきましょう。
65歳で「年金200万円」だったが…〈75歳の受取額〉に誰もが歓喜!とはいかない「衝撃事実」 (写真はイメージです/PIXTA)

年金の「繰り上げ受給」と「繰り下げ受給」…それぞれのメリットとデメリット

いまの高齢者は、どれくらい年金をもらっているのでしょうか。

 

厚生労働省の調査によると、国民年金受給者の平均年金受給額は老齢年金で月額5万6,479円。40年間、保険料を払えば満額で6万6,000円ほど受給されますが、それよりは月1万円ほど少なくなっています。

 

厚生年金受給者の平均年金受給額は老齢厚生年金で月額14万5,665円。さらに男女別・年齢別にみていくと、男性65歳以上では月16万9,006円。女性65歳以上では月10万9,261円です。老齢年金は原則65歳から受け取ることができますが、元・サラリーマンであれば、年に200万円程度の年金を受け取っています。

 

年金(老齢年金)の受け取りは原則65歳ですが、希望すれば60歳から65歳になるまでの間に繰り上げて受け取ることができます。また同じように、希望すれば65歳で受け取らずに66歳以後75歳までの間で繰り下げて受け取ることもできます。

 

繰り上げ受給のメリットは「収入の空白を埋められる」こと。現在、多くの企業で60歳を定年年齢としていますが、そのまま現役引退を選んだ時に問題になるのが、65歳年金受給までの5年間は無収入になります。どんな節約をしようと、少しずつ、資産が減っていくという事態に直面します。そんななか、年金をもらい生活費の足しにできれば安心材料となるでしょう。

 

デメリットは、繰り上げする月数に応じて65歳から受け取れるはずの年金額から減額されること。「減額率= 0.4%*1×繰上げ請求月から65歳に達する日*2の前月までの月数*3」で計算され、最大で24%が減額。それが生涯続くことになります。

 

*1: 昭和37年4月1日以前生まれの方の減額率は、0.5%(最大30%)

*2:年齢の計算は「年齢計算に関する法律」に基づいて行われ、65歳に達した日は、65歳の誕生日の前日になる

*3:特別支給の老齢厚生年金を受給できる方の老齢厚生年金の減額率は、特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢に達する日の前月までの月数で計算する

 

一方で、繰り下げ受給のメリットは、なんといっても繰り下げた期間によって年金が増額されること。「増額率*4=0.7%×65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数*5」で計算され、最大84%が増額。その増額率は一生変わりません。

 

*4:昭和27年4月1日以前生まれの人(または平成29年3月31日以前に老齢基礎(厚生)年金を受け取る権利が発生している人)は、繰下げの上限年齢が70歳(権利が発生してから5年後)までとなり、増額率は最大で42%

*5:65歳以後に年金を受け取る権利が発生した場合は、年金を受け取る権利が発生した月から繰下げ申出月の前月までの月数で計算する

 

しかし、繰り下げ受給は、配偶者が年下の場合、「加給年金」を受け取れなくなるデメリットもあります。加給年金は厚生年金の被保険者が65歳に到達した時点で、被保険者が扶養する子どもや配偶者がいる場合に支給される年金のこと。諸条件をクリアしていれば、配偶者で22万8,700円、1人目・2人目の子どもは各22万8,700円、3人目以降の子どもには各7万6,200円が支給されます。しかし厚生年金を繰り下げ受給をしている間は、加給年金が停止になってしまうのです。