タワーマンション(以下タワマン)が増え続けています。そこで今回は、高齢化が進む日本において、高齢者がタワマンに住むリスクについて、事例とともにFP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
近年急増の〈タワマン孤独死〉の実態…資産1億1,000万円の65歳独居老人、終の棲家に「タワマン」を買って大後悔【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

タワマンでの孤独死事例

このように発見が遅れる孤独死はあまり表には出ませんが、特殊清掃業者にお世話になるケースが多いため、いくつかの特殊清掃業者のサイトから事例を集めてみました。

 

ケース1:コロナ禍での自殺

関東地方のタワマンに住んでいたある女性は経済的にも問題ない生活を送っていたようですが、もともと人間関係は希薄だったため、コロナ禍でさらに自宅に引きこもるようになり、気持ちもふさぎ込んでしまったのでしょうか。後日、自室で自殺しているのが発見されました。

 

ケース2:季節が1つ変わってからごみ屋敷状態の自室で遺体を発見

夏ごろに亡くなったと思われる高級マンションに住む70代の男性は秋まで遺体が発見されませんでした。部屋には大量のマスクや食料品等があり、新型コロナウイルスの感染を恐れていたようで、ほとんど外出しない生活を送っていたようです。周囲から孤立しており、家のなかは荒れ果て、孤独感からかごみ屋敷状態だったそうです。

 

ケース3:まさかの凍死

1DK高層マンションで孤独死した個人事業主の70代の男性は死後1ヵ月が経過してから発見されており、こちらは冬の寒さによる凍死です。高層マンションに住んでいながら「なぜ?」と思われるかもしれませんが、経済状況の悪化と孤独感から暖房もあまり利用せず、絶望により死に至ったようです。

 

ケース4:風呂場での事故死

東京都内のタワマンでは浴槽内での事故死で遺体の発見までに1ヵ月以上を要したというケースもあります。2LDKのファミリータイプの広い部屋だったそうですが、親族とは離れて一人で暮らしていたそうです。

 

一般人から見るとタワマンでの生活には憧れがあるものですが、孤立化や閉塞化は予想以上に進んでいるようです。

終の棲家にタワマンを選んだ65歳の独居老人

定年退職を迎え、退職金と併せた貯金やもともと住んでいた戸建てなどの資産が1億1,000万円あったAさん(65歳)。終の棲家として思い切ってタワマンを購入し、一人暮らしをしていました。しかしこのところ、コロナ禍で引きこもることが多く、足腰が弱くなったせいか、最近は部屋のなかでよく転ぶようになり不安を感じ始めました。

 

「いまのところは転んでもケガには至っていませんが、『頭を打っていたらどうしよう』とか『夜中にトイレに行って転んで骨でも折ったらどうしよう』とか考えるようになりました」

 

Aさんは妻に先立たれ、子供は2人いますが離れて暮らしています。

 

「1人で生活しているとどうしても妻のことを思い出して寂しくなってしまいます。タワマンの内見に来たときに見た景色のよさから『気持ちも明るくなるかな』、と思いましたが入居後すぐに戻ってしまいました。タワマンも固定資産税やら相続税の増税の話題もあるので、将来の資産価値もどうなるかわかりません。もうしばらくしたら手放して老人ホームへの入居も検討しています」

 

と悲しそうに話していました。

共有施設を利用して孤独感を防ぐ

高齢者の心と身体の健康を守るためにタワマンのさまざまな共有施設を活用しましょう。

 

ジムにプール、スパ(大浴場)、ライブラリにシアタールームといった設備を備えている所も多いので、こういった施設を積極的に利用して、自室から積極的に外に出て、身体と頭を動かすようにしましょう。誕生日などのイベント時にパーティールームにお子さんやお孫さんをときどき招いてワイワイやるのも気持ちが明るくなるはずです。

 

最近、いろいろと話題のタワマンですが、上手に利用して心身ともに健康的に過ごしましょう。

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表