公務員には副業規定がありますが、規定内であれば不動産投資などで副収入を得られるチャンスがあります。金融機関の評価が高い公務員は、融資審査に通りやすく、ローンを組んでの不動産投資も始めやすいでしょう。今回は、Aさんの事例をもとに現在40歳の公務員が投資した場合、老後にどれだけのメリットがあるのかをFP1級の川淵ゆかり氏がシミュレーションします。
40歳・消防士「4,000万円のローンを組んでアパート投資」衝撃の35年後【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

Aさんのアパート経営シミュレーション

■資金計画

・物件価格:5,000万円

 (自己資金1,000万円+アパートローン4,000万円)

  ※ アパートローンの借入期間は25年、借入金利は年2%で計算)

・想定年収:480万円

・諸経費率:15% (固定資産税、火災保険料、管理費等)

 

■シミュレーション結果

・ローン返済年額:約204万円(総返済額:約5,087万円)

・諸経費(空き室見込み分含む):約120万円

・手取り金額(家賃収入-ローン返済額-諸経費):年間約156万円

・表面利回り(家賃年収÷物件価格):9.6%

・実質利回り((家賃年収-諸経費)÷物件価格):7.2%

 

以上から今後35年間の収益は、

 

 156万円×25年間=3,900万円(アパートローン返済期間中)

 360万円×10年間=3,600万円(アパートローン返済完了後)

 合計 7,500万円

 

Aさんは、65歳までにアパートローンを完済したいということだったので、25年ローンで計算しましたが、ローン期間を短縮することで支払利息を減らせます。そのためさらなるトータルリターンを増やすことができるのです。また、実質利回りの合格ラインは5%以上が理想といわれるので、合格点だと判断できます。

 

しかし、この計算方法には落とし穴があります。

 

アパートローンを利用することにより利息の支払いが発生しますが、利息分については利回り計算には入れませんし、変動金利型ローンの金利は金利上昇のリスクもあります。さらに管理会社に管理業務を委託しているため、人件費等の高騰により、今後の管理料の値上がりも想定しておかないといけません。ほかにもアパート経営にはいろいろなリスクがありますので、利回りだけを見るのでなくさまざまな問題点を考えて実行する必要があります。

アパート経営の難しさを理解して総合判断を

管理業務は委託することになっていますが、管理会社にすべて任せるのではなく、自分でも経営状態を把握しておく必要が当然あります。たとえば空室が出ないような対策を考えたり、周辺のニーズ(Aさんの場合は大学生)に合っているかなどを定期的に確認する必要があります。

 

また、定期的なメンテナンスも必要で、こまめなメンテナンスを怠ることで、あとあと大規模な修繕費がかかることもあります。こういった費用も「塵も積もれば山となる」で、アパート経営の結果に影響してきます。想定外のリスクに備えておくこともアパート経営には重要です。

 

私たちの生活をみても、ここ数年で新型コロナウイルスや物価の上昇、ウクライナ情勢など考えてもみなかった変化がありました。Aさんの場合は、近くの大学に通う大学生や独身の職員をターゲットにしていますが、今後数十年にわたるアパート経営のなかで、少子化の影響はアパート経営にも出てくるかもしれません。

 

また、日本は地震大国ですから、アパートが災害に見舞われることに備え、火災保険や地震保険への加入はもちろん、住民の避難先や連絡網の管理や建物の大規模修繕が必要になることもあります。

 

ほかにも、アパートが古くなると空室率も上昇するため、家賃収入の減少さらに設備や建物の大規模な修繕費が発生してしまうことで、当初のシミュレーションとの狂いが生じてくるケースも珍しくありません。

 

これも当然ですが、アパート経営を開始した翌年以降から毎年継続して確定申告をする必要が出てきます。利益が出た場合は所得税や住民税などの納税額も増えますので、これも事前に想定しておかなければいけないところです。もし、確定申告を怠った場合は申告によって納める税金に加えて加算税が課されるので遅れないように注意しましょう。

 

以上のような想定外のリスクに備えるためにも、アパート経営には常に十分な余裕資金が必要ですし、公務員という本業があるといっても経営者としての資質やセンスも必要になってきます。失敗すると老後資金にも大きなダメージとなりますので、安易にはアパート経営に踏み切らず、十分な検討をするようにしましょう。

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表