長生きすればするほど、老後資金が足りなくなるリスクが増大します。これに対処するには60歳以降もお金を増やしていくことが必要であり、そのために有効な方法の一つが「投資」です。投資でリスクを抑え、着実にお金を増やすには、どうすればよいのでしょうか。FPの浦上登氏による著書『70歳現役FPが教える 60歳からの「働き方」と「お金」の正解』(PHP研究所)から一部抜粋して紹介します。
投資は「60歳から」でも間に合うが…失敗しないため絶対守るべき「3つのルール」【70歳現役FPのアドバイス】 (※写真はイメージです/PIXTA)

分散投資の基本1|「時間のリスク」を分散する

なぜ長期保有か?

長期投資とは、長期にわたって株式やその他の資産に投資をすることをいいます。

 

先ほど述べたように、時間により株価は上下するので、長期保有をすることにより、時間のリスクを分散し、極端な動きをやわらげることができます。

 

S&P500および日経平均株価について、リーマン・ショック直前の最高値から10年間の株価の動きを見ると、山谷はあってもS&P500、日経平均株価とも10年後には株価が上昇していることがわかります。

 

■S&P500

2007年10月9日 1565.15ポイント 100%

 

2017年10月9日 2544.73ポイント 163%

 

■日経平均株価

2007年5月1日 17274.98円 100%

 

2017年5月1日 19310.52円 112%

 

すなわち、10年間という長期で見ると、アメリカ株S&P500では、株価が下落したまま回復しなかったり、下方へ向かって突き進むことはほとんどなかったということができます。

 

ところが、日本の日経平均株価では、史上最高値は1989年12月29日の38,915.87円(終値)で、それを33年以上たった現在(2023年6月9日)でも更新していません。

 

アメリカ株の回復力の高さと日本株の低迷が見て取れます。

 

こういう比較をすると、同じインデックス・ファンドに投資するにしてもアメリカ株に投資したほうが儲かると思う人が多いのも納得がいきます。

 

毎月一定額買うと平均購入単価が安くなる

長期投資を長期積立で行うことで、さらにメリットが出てきます。

 

長期積立とは毎月1万円など、自分で決めた投資額で株価を長期にわたり(例えば10年間)継続して購入することです。

 

「ドルコスト平均法」という言葉を聞いたことがありますか?

 

株式のような価格の変動する資産に毎月一定額を投資した場合、株価が安いときは多くの株式が買え、株価が高いときは少ない株式しか買えません。その結果、毎月1株ずつ買った場合と比べ、毎月一定額ずつ買ったほうが、平均購入単価が安くなるのです。

 

購入方法を変えただけで、ほんとに安くなるのかと思われるかもしれませんが、間違いありません。

 

また、ドルコスト平均法による積立投資は、皆さんが証券会社を通じて投資信託を買う場合に通常行っている方法なので、あえて意識的に行う必要はありません。

 

相場が下がっているときでも、積立だと不安をやわらげる効果がある

株式投資は感情に左右されることが多く、株価が暴落したときにも、平然として、冷静に判断できる人は少ないものです。感情に打ち勝って投資を続けることができるかどうかは、投資が成功するか否かを決める大きな要素です。

 

長期にわたって積立を行うことのメリットは、相場の下落時にも、それほど大きなストレスを感じずに済むことです。

 

毎月少しずつの投資なので、「間違っても致命傷にはならない」「最悪、積立を中断して様子を見ることもできる」という余裕を持つことができ、比較的冷静に積立を続けることができます。中断をしなくとも、積立金額を減らして様子を見ることも可能です。

 

また、機械的に購入するので、心配や不安などのネガティブな感情や儲けてやろうという欲がはいりこむ隙がありません。

 

「下手の考え、休むに似たり」。感情に左右されず機械的な投資を行うには、積立投資が一番です。