株式投資を行う上では、株価をはじめ、企業業績や投資による利益などの数字に敏感でいることが重要です。本稿では、株式会社ソーシャルインベストメントの川合一啓氏が、投資による資産形成を行う際に求められる数学的知識として「割合」「確率」「複利」について解説します。
投資に「絶対」はないが…勝率アップのために確実に押さえたい3つの基礎知識 (※写真はイメージです/PIXTA)

 

銘柄・マーケット分析に役立つ「割合」

株式投資では、いろいろな「割合」がデータとして重要になります。割合は、「対象内の特定数値÷対象全体の数値」で求められます。つまり、単純な割り算ができれば、様々な割合を求めることが可能です。

 

なお割合は、「0」「0.5」「1」「1.5」などそのままの値でも、出てきた答えを100倍して、「0%」「50%」「100%」「120%」と表記することも可能です。どちらで表記するかは、データによってそれぞれ慣習があります。例を挙げてみましょう。

 

決算書関連 出所:筆者作成

 

株価関連 出所:筆者作成

 

以上の例だけでなく、株式投資では様々な割合をデータとして用います。

 

「割り算をする(場合によっては100を掛けて%表記にする)」「どんな割り算でその値が算出されているかを知る」を習慣化しておくことで、個別の銘柄やマーケット全体を分析する力が身につくでしょう。

 

大雑把でも把握しておきたい「確率」

「割合」の一種ともいえますが、不確実な未来を予想する株式投資では、大雑把にでも「確率」を計算することが重要です。確率は次のように求めます。

 

その出来事が起こる確率=その出来事の数÷すべての出来事の数

 

「割合」のときと同じく、「確率」も分数や小数で表記する場合と、100を掛けて「%」で表記する場合があります。

 

例として、サイコロを1回振り、1が出る確率を求めてみましょう。

 

1(1が出る出来事の数)÷6(すべての出来事の数)=1/6=0.166
これに100を掛けて16.6%となります。

 

同様に、サイコロを1回振って偶数が出る確率は、

 

3(偶数が出る出来事の数=2と4と6が偶数)÷6(すべての出来事の数)=3/6=0.5
これに100を掛けて50%となります。

 

ただし投資は、サイコロの目のように分母と分子が明確ではなく、正確に確率を導き出せるものではありません。その点には注意が必要ですが、それでも確率を考えてみることは重要です。

 

なぜならば、投資は未来を予測する行為であり、そして未来予測に「絶対」(確率が0%か100%)はないからです。であるならば、「この株は90%以上の確率で上がりそうだ」「この株は50%位の確率で下がりそう」など、大雑把でも予測を立て、「割合」とも組み合わせて分析してみることが、勝率を上げることにつながります。

 

資産形成の強力な味方「複利」

長期的な資産形成を考える場合、ぜひとも味方につけたいのが「複利」という考え方です。複利運用とは、分配金や配当金など、得た利益を元本に再投資し、大きくなった元本を基に次の利息や分配金を計算していく運用手法です。

 

たとえば、元本100万円を年間10%の利益で10年間複利運用した場合の計算式は次のとおり。

 

1,000,000×(1+0.1)^10年

 

1年後には元本の100万円×(1+0.1)で110万円、2年後は大きくなった元本110万円に10%の利益が乗って121万円、3年後は133万1,000円…と雪だるま式に資産が増え、10年後には約259万円となります。

 

一方、利益や配当金を元本に再投資しない単利の場合は、

 

1,000,000+(10万円×10年)

 

単純に毎年元本の10%=10万円が積み重なっていくだけであり、10年後の資産は200万円にとどまります。

 

複利と単利では、10年間の運用結果に60万円近い差が出ることがわかります。ちなみに、20年だとその差は370万円超。複利運用は資産形成の強力な味方なのです。そのため多くの投資家が利益を再投資しており、勝つにしろ負けるにしろ、資産形成においては複利の計算をする機会も少なくありません。

 

その概念と計算方法を覚えておいて、損はないでしょう。