未来になるほど価値を割り引く「DCF法」
会社の価格を算定する方法は複数存在しますが、そのうちの1つに、「DCF法」があります。
これは「Discounted Cash Flow」の略であり、日本語では「キャッシュフロー還元法」などと呼びます。
「毎年生み出すキャッシュの合計額がその会社の価値である」と考えるのがこの方法の基本です。ただし、今年生み出すキャッシュは、来年以降に生み出すキャッシュとは同価値ではないとみなし、未来になるほどその価値を割り引いて考えます。
たとえば、永遠に毎年1億円のキャッシュを生み出す会社Aがあったとします。
A社が1年後に生み出すキャッシュは9,000万円相当、2年後に生み出すキャッシュは8,000万円相当、3年後に生み出すキャッシュは7,000万円相当…というように考えるのです。
そしてこれを永遠に繰り返すと、いずれ生み出すキャッシュは0円相当となり、合計額を計算できるようになります。
このようにして、毎年生み出すキャッシュの合計額を計算してその会社の価格を算定するのが、DCF法です。
DCF法による計算は、数学的原理としては高校数学の「等比数列」を用いるのですが、結論として以下の簡単な式になります(その数学的原理について興味のある人は、等比数列やDCF法の詳細を調べてみるとよいでしょう)。
先ほどの会社Aの例では、毎年1億円のキャッシュを生み出し、割引率を10%と考えていました。
したがって会社Aの価格は、
と算定することができます。
割引率は、安定性や成長性が低い会社だと思える場合に大きく設定します。それにより、未来に生み出すキャッシュを少なく見積もるのです。一方、安定している会社や成長が望める会社の場合は、割引率を低く設定します。
株式を買うという行為は、その会社の所有権の一部を買うということでもあります。ですから企業買収などにも用いられるこのDCF法の考え方は、覚えておくとよいでしょう。
そして、「DCF法によって算定した会社の価格÷発行済株式総数」が、「妥当な株価」「適正な株価」といえるのかもしれません。
平均して得られるリターンを導く「期待値」
「平均していくらリターンを得られるか」を示すのが「期待値」です。
たとえば、100万円をある対象Bに投資した1年後、「80万円」「100万円」「120万円」「150万円」「200万円」のリターンが得られる複数の未来があったとします。
この場合、
となり、1年後の期待値は130万円となります。
なお、投資額100万円を1(100%)として、この投資対象Bの期待値を「1.3(130%)」と表記する場合もあります。「複数の未来」などと奇妙な表現をしましたが、そんな想定をしなければならないため、期待値は明確な計算をするのが難しいものです。
しかし、その大きさを大雑把にでも考えてみることは重要です。
なぜならば、平均していくらリターンを得られるかを示すのが期待値ですから、期待値が大きいところに大きく賭けるのが、大きなリターンを得るコツとなるからです。
ただ、いくら期待値が高くても、運が悪ければ破滅するような賭けを避けることも重要です。
たとえば、100万円をある対象Cに投資した1年後、「0円」「100万円」「150万円」「250万円」「300万円」のリターンが得られる複数の未来があったとします。
この場合、
となり、1年後の期待値は160万円と、非常に分が良い勝負のように思えます。
しかし、4/5の確率で損はしませんが、1/5の確率で100万円が0になってしまいます。こういう勝負は避けた方がよいでしょう。この勝負を避けるべきかどうかの判断を下すためにも、期待値の概念を理解しておく必要があるのです。