奨学金は、学費の負担を軽減し、学びを得ようとする多くの学生にとって教育を受ける機会を提供してくれる希望です。一方で、お金を「借りる」ため、貸付期間が終了したあとは、当然ながら返済を行っていく現実が待ち受けています。では、もし返済を滞らせてしまうと、どうなるのでしょうか。本記事では、CFPの伊藤貴徳氏がAさんの事例とともに奨学金延滞の危険性について解説します。
手取り月20万円の32歳会社員「どう考えても返済できない」…“奨学金延滞”で待ち受ける絶望の未来【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

日本学生支援機構から「奨学金延滞の連絡」が来たら…

奨学金の種類

奨学金の貸与型には、以下の2種類があります。 

 

第一種:無利子(成績等が一定以上の方) 

第二種:有利子 

 

利子には、利率固定方式と利率見直し方式があります。これは住宅ローンでいうところの固定金利と変動金利のようなもので、条件が定められています。 

 

日本学生支援機構「令和2年度奨学金の返還者に関する属性調査結果」によると、奨学金はどのように役になったかという問いに、「家計の負担を軽減できた」が69.1%(無延滞者)と回答しており、家計の負担の軽減に大いに役立っていることが伺えます。 その一方で、家計の状況により、借りた奨学金が返せない方がいるのも事実です。 

 

延滞者の現状 

日本学生支援機構「返還金の回収状況及び令和元年度業務実績の評価について」によると、奨学金の延滞債権数割合は全体の6.8%となっており、未回収額は841億円となっています。 加えて、延滞をすると以下のようなデメリットがあります。 

※以下、日本学生支援機構HP一部抜粋 

 

個人信用情報の取り扱いに関する同意書を提出していただいている方のうち、現在奨学金を返還されている方は、延滞3か月以上の場合に個人信用情報機関に個人情報が登録されます。 
個人信用情報機関に延滞者として登録されると、その情報を参照した金融機関等がその人を「経済的信用が低い」と判断することがあります。それによって、クレジットカードが発行されなかったり、利用が止められたりすることがあります。 また、自動車ローン及び住宅ローン等の各種ローンが組めなくなる場合があります。 
一度登録された情報は、延滞中はもちろんのこと、延滞を解消しても一般のクレジットカードと同様に約束どおり返済している人の情報として登録され続け、返還完了の5年後に削除されます。 

 

3ヵ月以上奨学金の延滞を行うと、個人信用情報機関に個人情報が登録されます。 俗にいう、「信用情報に傷がつく」という状態になってしまうのです。 個人信用情報機関に登録された場合、以下のようなことが起こり得ます。

 

・クレジットカードが新しく作れない、利用停止となる 
・住宅ローンを利用するとき、審査に不利となる 

 

また、数年は履歴として残ることにも注意が必要です。 Aさんも延滞して3ヵ月を越えようとしています。このままでは、将来家を購入するとなった際に住宅ローンが組みづらくなる可能性があります。 

 

延滞しないためには…

延滞することのデメリットをお伝えしましたが、奨学金は一般的な金融機関からの借入と比べても低金利で、優れた制度なのは間違いありません。 大切なのは、余裕を持った資金計画を立てるということです。 

 

また、「奨学金は借りたお金」という認識を持つことも大切です。 学生生活のあいだは、毎月決まったお金が振り込まれることに慣れてしまいがちです。現在貸与中の方・返済中の方は、卒業後にいくらを、何歳になるまで返還する、というところまでイメージしておきましょう。