低金利の変動金利で住宅ローンを組んだものの、近年の金利上昇で返済額が増加し、家計を圧迫されている人は少なくありません。変動金利の利用者は、金利上昇に対しどのような対処をすればよいのでしょうか? 本記事ではAさん夫妻の事例とともに、家計を守るための対処法について、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
詰みました。「変動金利」を選んだ世帯年収900万円の40代夫婦「都内6,000万円のマイホーム」の灯が消えるまで…金利0.2%上昇で酷すぎる事態に【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

銀行のシミュレーションを信じたが…

「いまが買いどきです! この低金利はいまだけかもしれませんよ」 

 

数年前、住宅購入を考えていたA夫妻は不動産営業マンの言葉に背中を押され、都内に念願のマイホームを購入しました。 購入時の金利は 変動0.5%。毎月のローン返済額は 約15万5,000円。 

 

担当者からは、「固定金利よりも金利は低いですよ」「金利が上がるリスクはありますが、日本は長年低金利なので大丈夫でしょう」と説明を受け、A夫妻も 「まあ、金利が急に上がることはないだろう」 と楽観的に考えていました。さらに、銀行のシミュレーションでは「将来金利が多少上がっても返済は問題ない」と示されていたため、迷うことなく 「変動金利」を選択 しました。 

 

A夫妻 (夫40歳・会社員、妻38歳・パート)、子ども2人(小学生)

・ 世帯年収:900万円弱(夫:900万円、妻:扶養内パート)

住宅ローン:6,000万円(変動金利0.5%・35年)

購入時期:2010年代後半 

現在の状況:日銀の金利引き上げで月々のローン返済が増加し、家計が圧迫されつつある 

2025年、まさかの金利上昇…家計に与える深刻な影響 

それから数年後の2025年、日銀が政策金利の引き上げを決定。市場金利が上昇し、A夫妻の住宅ローンの金利も0.5%→0.7%に上昇しました。

 

返済月額の推移 

約15万5,000→約16万1,000円 

約6,000円の増加 

 

「月6,000円くらいの増加なら、そんなに影響はないだろう」と思っていた夫妻でしたが、昨今の物価高で住宅ローン以外の出費の増加も目立つようになりました。毎月膨らむ食費や生活費に辟易としていたA夫妻はあることに気づき、逃げ場をなくします。 

 

「詰みました……。家を買う前の生活費と、いまの生活費を比べたら、倍近くになっていたんです」 

 

生活費もさることながら、今後も金利が上昇したらローンの返済額も増えつづけるかもしれない……と不安に押し潰されそうになっていました。