「人生100年」といわれる時代、老後の資金はできるだけ潤沢に保ちたいものです。そのためには、「退職金」の受け取り方も、税金等の負担がより少なく、有利な方法を選ぶことが大切です。では、どのような受け取り方を選べばよいのでしょうか。FPの浦上登氏による著書『70歳現役FPが教える 60歳からの「働き方」と「お金」の正解』(PHP研究所)から、3つの方法を紹介します。
65歳サラリーマン「定年退職金2,000万円」…受け取り方の違いで「納税額に何百万円もの差」が出てしまうワケ【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「企業型DC」あるいは「iDeCo」と退職金の節税効果を最大限発揮する方法

会社の企業年金制度に確定拠出年金がある場合、または、それと同じ仕組のiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入している場合、企業型確定拠出年金またはiDeCoを一時金で受け取った後、4年超あけて退職一時金をもらうと、退職所得控除が2回使えて、節税効果がさらに高まります。

 

年金には確定給付型年金と確定拠出型年金があります。

 

確定給付型年金は、会社側が資金を運用して退職金を準備する制度です。

 

これに対し、確定拠出型年金は会社側が掛金は出しますが、運用は従業員自身が行う制度です。

 

iDeCoも個人型確定拠出年金という通り、個人が掛金を出し、運用も個人のリスクで行います。確定拠出型年金の一時金は60歳から75歳のまでの間に受け取ることができます。

 

受取時期を選べるので、企業の退職一時金を65歳でもらうとしたら、企業型確定拠出年金またはiDeCoを60歳でもらえば、両者の間に4年超の期間があくので、退職所得控除が2回使えることになるのです。

 

次の前提でどのくらいメリットがあるか試算をしてみましょう。

 

■前提条件

退職一時金:2,000万円

 

企業型確定拠出年金またはiDeCo:500万円

 

勤続年数:60歳時点で勤続30年、65歳時点で勤続35年

 

1. 65歳で一緒にもらう

課税対象金額:

 

(2,000万円+500万円)−(40万円×20年+70万円×15年)=650万円

 

650万円×1/2*=325万円(課税対象金額)

 

所得税 325万円×10%−9.75万円=22.75万円

 

住民税 325万円×10%=32.5万円

 

税金計 55.25万円

課税対象金額が325万円のときの所得税率は10%、所得控除額は9.75万円、住民税は一律10%にて計算

 

2. 60歳と65歳の2回に分けてもらう

2-1 60歳で企業型確定拠出年金またはiDeCoをもらう

 

課税対象金額:

 

500万円−(40万円×20年+70万円×10年)=0万円

 

0万円×1/2*=0万円(課税対象金額)

 

税金計 0万円

控除額が受取額を超えているので、税金はゼロ

 

2-2 65歳で退職一時金をもらう

 

課税対象金額:

 

2,000万円−(40万円×20年+70万円×15年)=150万円

 

150万円×1/2=75万円(課税対象金額)

 

所得税 75万円×5%=3.75万円

 

住民税 75万円×10%=7.5万円

 

税金計 11.25万円

課税対象金額が75万円のときの所得税率は5%、住民税は一律10%にて計算

 

65歳でまとめてもらうと、税金は55.25万円、60歳と65歳で分けてもらうと11.25万円となり、44万円の節税となります。

* 国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)―計算方法・計算式」による