速報でも流れた「東京23区の新築マンション平均販売価格1億円超え」のニュース。東京に家を持つなど夢のまた夢である現実を突きつけられたことでしょう。しかし、なかにはちょっと無理して億ション購入に踏み切る、普通の会社員の姿も。しかしそこには大きなリスクも内包しています。みていきましょう。
都心の億ションを買う「年収1,400万円」の勝ち組夫婦「まさか、こんなことになるとは…」ローン破綻に追い込まれる想定外 (写真はイメージです/PIXTA)

夫婦は力を合わせて億ション購入も、ローン破綻のリスク

また、以前からタワマンの有力な買い手として注目されているパワーカップルも、東京の新築マンションの有力な購入層。タワーカップルについては、世帯年収1,200万円以上とか、共に700万円以上で世帯年収は1,400万円以上とか、明確な定義はありませんが、夫婦共働きで高収入、消費意欲が旺盛というのが特徴。家庭と仕事を両立するためにも、職住近接の東京都心のマンションは有力候補となります。億超えという破格の値段でも、夫婦は力を合わせればなんとかなると、購入しているわけです。

 

ただ夫婦合わせたら高給取りのパワーカップルといっても、それぞれは普通の会社員。それで億ションを買うというのは現実的なのでしょうか。

 

年収に対して物件が何倍かを示す年収倍率は、5~7倍が適正といわれていますが、年収1,430万円超えの夫婦が1億円のマンションを買うなら適正値内。さらに年収に対するローン返済額の割合であるローン負担率は、20%程度が適正。年収1,400円の夫婦であれば、月に23.3万円程度であればムリなく返すことができる金額です。年利は1%、返済方式は元利均等で30年でローン完済と仮定すると、借入可能金額は7,254万4,982円。自己資金によりますが、十分、億ションを狙えそうです

 

一般の会社員では到底考えられない「東京都心の億ション暮らし」を2馬力で叶えるパワーカップルは、「単独ローン」ではなく「ペアローン」や「連帯債務型ローン」、「連帯保証型ローン」を選択するでしょう。しかし、そこに大きなリスクが隠されています。

 

「ペアローン」は夫婦各自の収入で審査を受けて、各自が主債務者になるもので、借入れ可能額は各自の収入に応じた金額となります。「連帯債務型ローン」は、夫婦の収入を合算して審査を受け、一方が主債務者、もう一方が連帯債務者になるもので、借入れ可能額は主債務者と連帯債務者の合算収入に応じた金額となります。「連帯保証型ローン」は夫婦の収入を合算して審査を受け、一方が主債務者、もう一方が連帯保証人になるもので、借入れ可能額は主債務者と連帯保証人の合算収入に応じた金額となります。

 

いずれも単独ローンに比べて多額の金額を借入できるメリットがあります。しかし「ペアローン」や「連帯債務型ローン」は片方の減収で返済が行き詰まることがあり、「連帯保証型ローン」の連帯保証人は住宅ローン控除や団体信用生命保険の対象外というデメリットもあります。

 

どのローンでも、2人で返せることが前提となるので、ライフスタイルの変化等で不測の事態が生じると簡単に家計破綻に陥ると考えられます。また事務手数料や保証料なども単独ローンと比べて割高になります。

 

――まさか、こんなことになるとは

 

想定外のことに夢のマイホームを手放さなくてはならなかったり、最悪、自己破産に陥ったりするリスクは、通常のマンション購入者よりも高いといえるでしょう。

 

普通の会社員でありながら、都心の億ション暮らしを実現するパワーカップル。まさに勝ち組といえるふたりですが、相当のリスクを承知のうえで夢を実現しています。そのことを知れば、「無理して都心の一等地暮らしを叶えるくらいなら、身の丈にあった郊外のマンションでいいや」と思えてくるでしょう。