日本は「物価が上がらない国」ではなく「物価を上げられない国」
このようにみていくと、世界では「物価がどんどん上がっていく」のがスタンダード。日本は世界のなかでも稀少な国だと言えます。ただ「物価が全然上がらないなんて、なんて暮らしやすい国なんだろう」と大喜び……と簡単にはいえないことは、多くの人が知るところ。日本は物価も上がらなければ、給与も上がらない国だからです。
OECDによる、1995年を100とした場合の賃金の伸び率(賃金指数)で、調査対象33ヵ国中トップは「エストニア」1,192.53。G7だけに絞ると、トップは「アメリカ」で249.41。「イギリス」「カナダ」「フランス」「イタリア」「ドイツ」と続いて「日本」は7位。調査対象33ヵ国中、ここでも圧倒的最下位です。
またILO(国際労働機関)によるレポート『世界賃金報告2022/23年版』でも、「2008~2022年のG20諸国における実質賃金上昇率をみていくと、トップは「中国」で2008年比で2.6倍。そして「イタリア」「日本」「メキシコ」「イギリス」の4ヵ国の実質賃金は「2008年と比較して2022年のほうが低かった」と記されています。
日本は「物価が上がらない国」というよりも「物価を上げられない国」といったほうが正しいく、世界の国の中でも危機的な状況に陥っているといえるでしょう。
とはいえ、物価上昇を忘れていた日本人にとって、この終わらない値上げラッシュは異常事態。わたしたちは、この状況にどう対処すればいいのでしょうか。
消費者庁は「物価が上がっているけど、消費者の私たちはどうしたらいいの?」というWEBサイト内で、以下のように提言しています。
【目指す姿】
①賃金も物価も上昇するとみんなが理解する
②働く人が賃上げを求めやすくなる
③企業が賃上げ分を価格に上乗せしやすくなる
【わたしたちができること】
①消費者の立場からも、この機会に物価と賃金の関係について考えてみる
②行きつけのお店や推しの商品に値上げがあっても、買って応援する
③賃上げを求め、賃上げが実現するよう自分もできることにトライする
賃金アップが実現するかどうか、という問題もありますが、まずはこの物価上昇を受け入れプラスに考えていくことが重要のようです。