先の見えない長い老後に、50代から備えよ
一方、老後不安を抱える5分の1が「不十分な退職金」をあげている点にも注目だ。
厚生労働省『平成30年就労条件調査』によると、退職給付制度(一時金・年金)がある企業は80.5%。大企業では9割に達し、中小企業(従業員30~99人)でも77.6%。このことから、多くの人が退職金を当てにしていることが想像できる。
退職金の平均額は、大学・大学院卒の定年退職で1,983万円。退職時の所定内給与が51.3万円であることから、およそ38ヵ月分の退職金を受け取っていることになる。一方、高卒の場合は1,618万円で、月収換算で40ヵ月分となっている。
大卒・大学院卒でおよそ2,000万円だとすれば、退職金だけで、例の「老後2,000万円問題」が解決するという見方もできる。だが、60歳で定年退職し、リタイアした場合、しばしば65歳の年金給付を待たずに退職金を使い果たし、最悪、老後破綻に陥るケースもあると、多くの専門家が注意喚起をしている。
これはごく簡単な算数の話で、資産形成を行うことなく、月収をきれいさっぱり使い果たすような生活習慣が染みついていることが原因で起こる。現役時代のように入ってくるものがないのに、生活を変えずに浪費を繰り返せば、いずれ「資金ショート」することは必至だ。
生活水準をいきなり下げるのは、だれにとっても容易ではない。だからこそ、子どもが巣立ったあとは、定年後を見据えて、生活のコンパクト化を進めるべきなのである。
サイズダウンを考える際、食費や交際費など変動費から手を付けるのは失敗のもとだ。まずは通信費や保険料などの固定費の見直しから始めよう。
ほかにもまだある。立派なドイツ車は本当に必要なのか。子どもが出て行った広い家を高額な費用を費やしながら維持する必要はあるのか。
必要ない車は売却しよう。郊外で車が手放せないなら、軽自動車に。維持費のかかる広い自宅は買い手がつくうちに売却し、夫婦2人で暮らすコンパクトなマンションに引っ越しを。これまでに溜め込んだ衣類、食器類、大きな家具なども処分し、最低限のものにしておけば、老後生活も身軽だ。何より、子どもたちに迷惑が掛からない。
「老後の生活に必要な額」は人によって異なるため、絶対的な正解は出せない。ただし、年金生活をスタートする前段階で、ライフスタイルの見直しが終わっていない・ライフスタイルを変える覚悟ができていないとなれば、かなりの確率で老後破綻するリスクがあるという点は、ぜひとも注意したい。50代からの「生活のダウンサイジング」が、長い長い老後の安心を築いていくのだ。
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