日本人の平均寿命は男性81歳、女性87歳と世界的にみても長寿化が進んでいます。これに伴い、老後の生活問題が取り沙汰されるようになりました。特に共働き世帯でなかった家庭における、残されたパートナーへの影響は決して小さなものではありません。本記事ではCFPの伊藤貴徳氏が、Aさんの事例とともに、世帯主に先立たれた場合に受け取る年金について解説します。
夫婦で年金月21万円だが…65歳妻、66歳夫が死ぬと「年金激減」、高齢者の未亡人が陥る「日本の過酷な現状」【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

Aさんの死後、妻の年金はいくらになる?

奥様が遺族基礎年金を受け取れないとどうなるのでしょうか。

 

Aさんの老齢厚生年金 92万円×3/4=69万円(遺族厚生年金)

奥様の老齢基礎年金 79万5,000円(令和5年度)

 

合計148万5,000円 

1ヵ月あたり年金額 約12万4,000円

※計算の便宜上、振替加算は考慮せず計算

 

Aさんご家族の場合、Aさんに万が一の事があった場合、およそ年間100万円の年金減少となることが判明しました。

夫が先立つ確率は?セカンドライフの「その先の生活」を考える

厚生労働省令和3年簡易生命表の概況によると、死亡率は男性と女性で異なることがわかります。仮に男性の平均寿命である81歳で比較をすると、女性の死亡率は男性のおよそ半分となっています。男女の平均寿命の違いからも、同年代の夫婦であれば、夫のほうが妻より先立つ確率は高いといえます。

 

パートナーが先立ってしまった場合、上記Aさんの事例のような年金受取額の減少や、生活サイクルの変化などが考えられます。もちろん、金銭的な変化だけでなく、精神的な負担も多いことでしょう。また、このようなことを想像する方はあまり多くないかもしれません。

 

しかし、いざこのような状況となってしまったときに、あらかじめ対策を立てているのと、立てていない(立てられない)のでは大きな違いがあります。特に、現役時代に共働きでなかった家庭については、お互いの万が一の事態にどのような対策を立てておくか考えておく必要があります。

 

人生100年時代といわれる今後、パートナーが先立ったあとの、セカンドライフの「その先の生活」もしっかりと計画しておく必要があります。セカンドライフの「その先の生活」を計画するには、

 

・世帯主に万が一のことがあったときの受取年金額を確認しておく

・受取年金額と現在の生活費を比べてみる

・受取年金額(収入)より生活費(支出)が多いようなら、生活費の見直し

・パートナーが先だった場合のライフプランをイメージしておく

・現在の居住や資産等、処分できるもの、しないものを区別しておく

 

Aさんの奥様についても、Aさんが仮に亡くなった際の年金額の減少に驚かれていました。現在は年金とこれまでの貯蓄によって生活が成り立っていますが、この先年金が減少するとなると生活が立ち行かなくなってしまう可能性もあります。

 

Aさんの奥様は、今後考え得る年金収入の減少の可能性と、減少するであろう年金額について認識を深めていただき、これからの生活について不測の事態が生じたとしても無理なく生活のできる水準を見つけていくことを決めました。

 

「漠然とした不安がありましたが、具体的に問題点を知る事ができて、少し気持ちが晴れました」そう残し、ご主人の待つ病院へお見舞いに向かって行きました。

 

 

 

伊藤 貴徳

伊藤FPオフィス

代表