年々、初婚年齢は上昇し「晩婚化」が顕著になっている昨今。少子化に拍車がかかる等、さまざまな問題が指摘されていますが、将来を見据えた資産形成においても心配が広がっています。本記事ではCFPの伊藤貴徳氏が、Aさん夫婦の事例とともに晩婚夫婦の資産形成について解説します。
世帯年収800万円のカップル「40代で結婚、親になりました」…晩婚夫婦に迫る「老後破綻の足音」【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

40代晩婚夫婦、フルローンで4,000万円のマンション購入

Aさんは現在47歳。妻は40歳です。2人は職場を通じて知り合い、5年前に結婚。関東近郊に住んでいます。

 

知り合ってから結婚までの年月が長かった2人は、結婚と同時にお互いの夢であったマンションを購入。購入価格は4,000万円で、夫婦でペアローンを組み返済を続けていました。月々の返済は、管理費積立金込みで約13万円。

 

当時の給料は手取りでAさんが30万円、妻が25万円。大きな貯蓄のなかった2人は、購入時の費用を抑える目的でフルローンでマンションを購入します。フルローンとは、住宅購入時の頭金を現金で支払わずに、頭金ゼロで住宅ローンを組むことをいいます。住宅ローンを組む際は、かつて物件価格の1〜2割を頭金として支払うとされていましたが、現在はこのようにフルローンが可能です。

 

贅沢な暮らしとはいかないまでも、不自由なく暮らしていける収入がありましたが、結婚5年目にして状況が変化します。

 

「ご覧のとおり、妻が仕事をセーブすることになりまして」

 

Aさんの話す席の隣には、小さなベビーカーにすやすやと眠る赤ちゃん。Aさん夫妻のあいだには、めでたいことに子供が誕生したのでした。

「初婚の晩婚化」による老後への影響

厚生労働省「令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると日本人の男女の初婚平均年齢は男性31.0歳、女性29.4歳となっています。平成7年と比べると、それぞれ3年ほど晩婚が進んでおり、年齢別に見ても、初婚の年齢は以前と比べると上がっています。

 

晩婚化に伴い、住宅購入や出産の年齢、お子様の進学に伴う教育費のかかる年齢などが後ろ倒しになる傾向があります。後ろ倒しになるだけならなんら問題はないようにみえますが、一般的に「住宅」「教育」の支出が終わったあとにやってくるのは「老後」。

 

Aさん夫妻のように、ライフステージの変化が後ろ倒しになることは、支出の山が後ろ倒しになることで、結果、老後のための生活資金の準備期間が短くなってしまったり、老後と呼ばれる年齢に子供の教育費が必要になったりすることがあります。

 

老後も不安だが…「いま」もすでに危うい収支バランス

もちろん老後の生活も大切ですが、Aさんはいまもすでに家計は危ういようです。

 

「妻が出産を機に退職し、住宅ローンをはじめとした生活費が重く感じてきていて、現在は貯金を切り崩しつつ生活を続けているんです。貯蓄もそう多くはありませんし、このままではさすがにまずいと思っています」

 

出産に伴い、出費の増加と妻の分の給与カットが家計に影響を与えていました。