持ち家離婚カウンセラーのアドバイス
今回のケースのように、 自宅を売却査定に出したところ、オーバーローンが発覚して困り果ててしまう事例は少なくありません。
オーバーローンでいますぐには売却できない場合、自宅と住宅ローンの名義を自宅に住み続けたい妻に一本化するという解決策が考えられます。この方法であれば、現状のローン名義人である夫がオーバーローンと諸費用の負担をせずに済むばかりか、ローンの名義人が妻に一本化されるため、夫の負債もなくなるのです。
しかし、「離婚」を理由とするローン名義の一本化について、快く引き受けてくれる銀行を見つけるのは簡単ではありません。銀行はそもそもそうしたニーズに対応する商品を持っていないことに加えて、「虚偽離婚」の形で離婚して、新たに契約した住宅ローンを別用途に使われるリスクを恐れています。そのため、個人で交渉を行うのは非常に難易度が高いのです。
「銀行がダメならば」と、司法書士や弁護士にアドバイスを仰いで名義変更を行ったところ、実はそれが現在借り入れを行っている銀行との契約違反だった、というのはもっとも恐ろしいケースです。最悪の場合、銀行から一括返済を求められることもありますから、まずは一度、既存の銀行との「金銭消費貸借契約書」に目を通しておきましょう。
方策が決まり、急速に動き出した離婚調停
自宅と住宅ローンの名義人を広子さんに一本化するという解決策が決まり、離婚調停の動きは急速に進みます。
敦さんとの面談から1週間後には、広子さんとご自宅近くのファミレスで打ち合わせを実施。離婚後の生活に対し不安を抱えている様子の母を心配してか、娘さんも同席していました。夜勤明けで疲れた様子の広子さんに今後の動きについて細かく説明し、前もって伝えてあった広子さんの個人情報に関する資料を受け取ります。
名義の一本化という方策は決まったものの、ローンの審査は難航することが予想されました。
広子さんがフルタイムの仕事に復帰してまだ1年も経っていなかったためです。しかし、広子さんに何種類もの書類を用意してもらい、銀行と粘り強く交渉を重ねた結果、同じ病院で長く勤めてきた点、広子さんの仕事が専門性の高い仕事である点が評価され、なんとか事前審査の承認をとることができました。
敦さんも広子さんも、「早く離婚したい」という点では一致していましたので、その後は最短で名義変更の手続きに着手しました。
今後は成人した2人の子どもと暮らしながら、自分でローンを返済していく覚悟を決めた広子さん。看護師としてのキャリアアップ・年収アップのために、日常の業務をこなしながら難関資格の取得に向けて勉強を続けています。
一方、離婚を決意してから実家に戻った敦さんは、最近体調を崩すことも増えてきた80代の両親との同居生活を続けることを決めました。独立から5年が経過して安定期に入った事業を続けつつ、両親の近くにいてあげたいとの思いから、実家の一部を改修して作業場を増築する計画を立てているとのことです。