年々、初婚年齢は上昇し「晩婚化」が顕著になっている昨今。少子化に拍車がかかる等、さまざまな問題が指摘されていますが、将来を見据えた資産形成においても心配が広がっています。本記事ではCFPの伊藤貴徳氏が、Aさん夫婦の事例とともに晩婚夫婦の資産形成について解説します。
世帯年収800万円のカップル「40代で結婚、親になりました」…晩婚夫婦に迫る「老後破綻の足音」【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

収入に対して「住宅ローン返済額」はいくらが妥当?

住宅金融支援機構 住宅ローン利用者の実態調査(2022年10月調査)によると、金利タイプが変動・固定期間選択型・全期間固定型のいずれにおいても、返済負担率は15%超20%以内とするほうが最も多くなっています。返済負担率とは、年収に占める年間返済額の割合のこと。

 

年収が500万円で返済比率が20%の場合、500万円×20%で100万円が年間の返済額となります。1ヵ月に換算すると100万円÷12ヵ月でおよそ8万3,000円です。

 

※月8万3,000円の返済額を住宅ローン借入額に換算すると、およそ3,300万円です(変動金利0.375%、借入期間35年の場合)。

 

言い換えると、返済負担率が20%とは、居住費を収入に対して2割に抑えられているということになります。返済負担率が低ければ低いほど、住宅ローンが家計に与える影響は少なくなるといえるでしょう。

 

金融機関は住宅ローンの審査をするとき、年収と返済額に対する返済負担率が何%となるかをチェックします。一般的に返済負担率の審査基準は30〜35%とされていますから、収入に対して30%程の居住費であれば、無理なく生活することができる水準ともいえます。

 

妻が退職し、1馬力となったAさんの場合

Aさんのケースでみてみると、共働きだったときは世帯年収が800万円。毎月の返済額は13万円なので、返済負担率はおよそ19%と良好といえます。ところが妻が退職したことでAさんの1馬力となり、Aさんのみの年収が500万円であったため、32%が返済負担率となっていました。

 

加えて、これまで年収800万円で生活していたAさん夫妻にとって、300万円の年収ダウンは大きな影響を与えました。生活水準を下げることは一朝一夕でできるものではないからです。

 

ペアローンの影響

ペアローンの場合、ローン支払いに影響を与えることがあったときのことを考えておきましょう。お互いの収入ありきで現在の生活を成り立たせているのであればことさら大切です。団体信用生命保険の加入はもちろん、民間の生命保険等で万が一の保障を賄うことも検討しましょう。

 

ライフステージの変化により収支バランスが変わる可能性があることも考えておく必要があります。

住宅ローンの返済計画を立てる際のポイント

どの家庭にもいえることですが、特に晩婚夫婦は住宅ローンの返済計画を立てる際には注意が必要となります。ポイントは以下のとおりです。

 

・晩婚化により、支出の山(住宅、教育、老後の三大支出)が後ろ倒しになり、それに対応する期間が短い傾向になりつつある

 

・住宅ローンの返済負担率を一定の範囲に保つことが、家計の安定に繋がる。

 

・ライフステージの変化を見越した金銭計画が必要であり、特にライフステージが後ろ倒しになると、老後の生活資金の準備期間が短くなる。

 

・夫婦での収入計画と保障の確保が重要で、共働きを前提としたローンの場合、お互いの万が一のための保障を検討する。

 

Aさん夫妻のライフプラン

Aさんの場合、共働き前提でマンションを購入し、お互いの収入に頼る形で資金計画を立てていた矢先に妻が仕事をセーブせざるを得ない状況となりました。収入と返済額とが釣り合わなくなってしまった結果、貯蓄を切り崩さなくてはいけない状況となってしまったのです。

 

住宅・教育・老後のように、大きな支出を伴うイベントの際は、今後の計画を立てながら家族でしっかり話し合う必要があります。

 

Aさん夫妻には、ライフプラン表を作成して今後の収支を可視化してもらいました。Aさんは現在47歳のため、お子様が大学に入学するおよそ18年後に支出のピークを迎えるとすると65歳になります。通常であれば、教育費と老後が同時にやってくるという状態ですが、現在のお勤め先のままであれば、65歳定年で退職金を見込むことができ、教育費へ充てることができそうです。

 

家計については、現在は赤字となっている状態ですが、妻の早期の仕事復帰で収入を増やすことを目標に、それまでの家計のやりくりを頑張っていきたいとのことです。

 

 

 

伊藤 貴徳

伊藤FPオフィス

代表