月収100万円のエリートサラリーマンだった30歳のAさん
「どうぞ、お掛けください」
Aさんのご自宅リビングへ通されました。都内のマンションにお住まいで、ご年齢は30歳。奥様との二人暮らしです。お部屋は綺麗に整頓されていますが、なんといいましょう、綺麗に片付けられすぎていて「モノ」がほとんどありません。
リビングの奥には夫婦と思われる2ショットの写真が飾ってあります。その写真の男性がAさんご本人と気づくまでにはだいぶ時間がかかりました。
Aさんは大学卒業後、大手金融機関へ就職しました。就職後数年で現在の奥様と結婚し、住宅を購入。仕事にプライベートに充実した生活を過ごしていました。月収はおよそ100万円。30歳前にその収入を手にすることは、一部のサラリーマンにとっての夢でもあるでしょう。しかし、Aさんはそれを維持することができず生活が一変してしまいます。
職場の人事異動により、Aさんはこれまでと別の部署へ。慣れない仕事内容やプレッシャーに押しつぶされ、配置転換を機に、次第にストレスを抱えるようになりました。
厚生労働省 令和3年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況によると、現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安やストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は53.3%となっています。特に今回のAさんと同じ30〜39歳は59.5%と1番比率が多く、仕事に対する責任を最も感じやすい年代といえます。
ストレスとなっていると感じる事柄がある労働者について、その内容をみると、「仕事の量」が43.2%と最も多くなっています。Aさんも朝から夜遅くまでの業務をこなし、自宅に帰ったあとも慣れない部署での業務に追いつくために勉強をする毎日でした。
ストレス発散目的で始めたソーシャルゲーム、次第に重課金勢となり…
そんなある休日にふと目に止まったのは、スマホのソーシャルゲーム広告。ソーシャルゲームとは、SNS上で遊べるゲームです。スマホで手軽にプレイができ、ゲーム内での他プレイヤーとの交流などもできるため若い世代を中心に人気となっています。興味本位で始めたAさんは、徐々にハマっていき、課金をしながらプレイをするようになっていきました。
「ソシャゲに課金する瞬間は、嫌なことを忘れることができる気がするんです。つい天井※までガチャを回してしまいます」とAさん。
※天井…一定額の課金をすることで強いアイテムやレアキャラクターを入手することができるという上限額。いくら課金しても狙ったアイテム等を入手できない事態を避けるために、ゲーム会社がそれぞれ設定しているシステムとのこと。
もともとはユーザーの過度な課金を防ぐ意図のために作られたシステムなのでしょうが、課金を日常としている、いわゆる重課金勢にとっては、天井まで課金すれば狙ったアイテムを入手できるという考えの人もいるようです。Aさんは、時間を見つけてはソーシャルゲームへ時間を費やし、毎月30万円近くの課金を続けるようになりました。