近年増加する「妻が年上の夫婦」
一昔前と比べ、「妻が年上の夫婦」が増えているように感じている方も多いと思います。厚生労働省の人口動態統計『初婚夫妻の年齢差別にみた婚姻件数・構成割合の年次推移』および『平成 28 年度 人口動態統計特殊報告「婚姻に関する統計」の概況』によると、初婚同士の夫婦のうち、妻が年上である割合は近年実際に増加していることがわかります。
昭和45年(1970年)では10.3%だったものが、平成21年(2009年)では23.7%、平成27年(2015年)では24.1%と、倍以上に増加しました。そのなかでも妻が夫よりも4歳以上年上の夫婦は昭和45年で1.8%、平成21年で6.1%と大幅に増えています。
この原因は推測するしかありませんが、女性の社会進出によって経済力の有無で結婚相手を決める傾向が弱くなったという点や、それにともない結婚に対する価値観のアップデートができていない「昭和型」の男性が避けられているという点も挙げられるでしょう。
なかには10歳年上、15歳年上という、いわゆる「年の差婚」も決してめずらしくありません。では、夫婦の年齢の大きな差は家計の面でどのように影響するのでしょうか。特に妻が大きく年上の場合、社会制度の面からのメリット、デメリットは存在するのでしょうか。実際の事例をもとに解説していきます。
16歳年下の男性と結婚した44歳のBさん
<事例>
夫A 28歳 公務員 初婚 年収450万円 貯蓄300万円
妻B 44歳 専業主婦 再婚 貯蓄500万円
子C 19歳 大学生(妻の連れ子)
子D 1歳
妻のBさんは44歳。23歳のときに2歳年上の男性と結婚し子供をもうけましたが、30歳で離婚。それから42歳までシングルマザーとして子供を育ててきました。
42歳のときにマッチングアプリで知り合ったAさんと結婚。Aさんの年齢は26歳でした。歳の差が16歳あり、妻のBさんの両親もAさんの両親も反対したものの、すでに子供ができていたため結婚に踏み切りました。妻のBさんはずっと「年下の男性」との結婚を望んでいたため、Aさんとの出会いは奇跡だと思ったのです。
妻のBさんが最初に結婚した夫は家計を顧みない浪費が多く、借金も多く抱えていました。しかしBさん自身も若かったこともあり独身時代のカードローンは完済できないままで家計を管理する意識が低かったのが現実です。2人で家計を協力して立て直していこうという意識を持てず、お互いのせいにしたまま険悪な状態で離婚しました。
Bさんが再婚相手に年下を希望していたのは、年上の男性では老人に見え恋愛対象にならず、同年代では元夫のように慣れ合ってしまい思いやりを交換できなくなるのでは、と思ったのがきっかけです。年下であれば、自分も素直になれるのではないか、という心理的な側面に加え「年下ならきっと経済的にも有利だろう」という根拠のない損得勘定もあったのは事実です。
年収400万円の26歳・公務員と交際、妊娠が発覚して結婚へ
出会ったAさんは26歳の公務員。年収は当時400万円強と決して多くはありませんでしたが、定年退職までの年数は長く、昇給も退職金もあり安定しているところが魅力でした。自己主張が強かった元夫とは違い、穏やかで素直な性格にも惹かれました。
しかし過去の失敗の記憶が何度もよみがえり結婚に踏み切れなかったところ、妊娠が発覚。Bさんは、結婚して育てたいと言ってくれるAさんと結婚する決断をしました。
子供の養育費のことで元夫と喫茶店で会ったとき、再婚することを告げました。元夫にAさんについて教えたところ、元夫はこんなことを言ったのです。
「オレがざっくり想像してみても、それは家計が回らなくなるだろう」
驚いたBさんが言います。
「なぜ? 公務員だし、若いし、贅沢しなければ生活していけると思う」
元夫は呆れたようにまた言います。
「財布のどんぶり勘定はまったく変わっていないね。誰かに冷静に計算してもらいなよ。また離婚するよ」
「むかし借金を作った人がどの口で言っているのですか……」
Bさんは元夫の嫌味だろうと軽く流しました。結婚し、出産に合わせてそれまで勤めていた勤務先を退職。夫のAさんは家事に積極的に参加する人だったこともあり、結婚当初はとても幸福感に包まれていました。しかし、結婚後1年間住んだ賃貸マンションをやめて、持ち家を購入しようとしたころからBさん夫婦は厳しい現実にぶつかってしまいます。