意外な解決策
解決策は驚くほどシンプルなものでした。
「持ち家は諦め、賃貸マンションで暮らすこと、それだけです」
ファイナンシャルプランナーは次のように説明しました。
「家計が破綻してしまう理由は、ひとつに住宅を買うタイミングが悪いということです。貯蓄が少なく、シングルインカムの状態で無理に住宅ローンを借りると利息の面で大きく不利になります」
「次に、ご夫婦の年齢差です。家計を支えるのが夫のAさんで若いため一生安泰のような錯覚がありますが、現在の年収がまだ高くありません。住宅を買うと維持費で苦しむことが予想されます。貯蓄ができて家計が楽になるのは夫49歳、妻65歳で第二子が大学を卒業するころです」
「しかしそのころになるとようやく住宅ローンを返済していく余裕が生まれますが、定年まで15年ほどしかありません。自己資金だけで住宅を購入できるのは退職金が受け取れる65歳のときでしょう。その時は妻のBさんは81歳となり、住宅を買って引っ越すことに環境的な負荷がかかりお勧めできません……」
妻のBさんは理解したようですが、夫の人生の選択肢を狭めてしまったような罪悪感を感じてしまいました。しかし夫のAさんは優しく、こう言ってくれました。
「家族でいるほうが大切なので一生賃貸でいこう」
持ち家を諦めたとしても、教育費にはお金をかけることが可能になります。住環境は多少不便でも教育を残してあげるほうが優先だと夫のAさんが言いました。
「年の差婚」で気をつけるべきポイント
ライフプラン上、年の差婚は人生において「やれること」に制限があるのが現実です。
・子供を持つ場合は夫婦の年齢差によって教育費のタイミングが苦しくなること
・夫婦のどちらかが早く定年退職してしまうため、そのあとに住宅ローンを返済していくことが困難になりやすいこと
・妻が年上の場合、老齢年金における加給年金が支払われないこと
・夫婦のどちらかが早くに無収入となるため、結婚前の貯蓄額が極めて重要であること
これらの特徴があります。
一般的に年の差婚は結婚前の貯蓄額が大きくなければ、住宅を購入することは難しいと言えるでしょう。必要な貯蓄額は家族構成と収入によって異なるため、ファイナンシャルプランナーなど専門家からのアドバイスが必要です。
この場合、投資信託や保険の解約返戻金としての「金融資産」ではなく、流動性の高い「普通預金」としての金融資産が最優先であるのは言うまでもありません。あるいは夫婦どちらかがすでに住宅を所有し借入金返済の目途がついていると安全です。
住宅購入は金額が莫大であり多くは住宅ローンを借りるため、年の差婚のように特殊なライフプランのケースではあきらめざるを得ない場合が多いのです。
年の差婚の大きなメリット
家計の収支の面ではデメリットのほうが際立つ年の差婚ですが、もちろん大きなメリットもあります。
年上の配偶者が社会経験が豊富で、実務的な問題に対処できる能力が高いことが挙げられます(もちろんそうとは限らないケースもありますが)。ファイナンシャルプランナーとして相談を受ける現場では、年の差婚の年上パートナーは目の前の問題に冷静に対処できるケースが非常に多いのが特徴です。家計のうちなにを改善すべきか、リスクにどう対処するか、という実務に対応しやすいのです。
特に同世代で若い夫婦の場合、意見や感情がぶつかり合い、理屈ではない心理的な問題が解決されないこともあります。年の差婚の場合は「相手が大人過ぎて口喧嘩にならない」という夫婦の意見が多いこともご存じの方も多いでしょう。
社会構造が変わりつつある現代の日本では、これからは特に「妻が年上、かつ年の差婚」の夫婦が増えていくことが予想されます。金銭的な面も、感情的な面も、冷静に考慮したうえで幸福な新婚生活を始めていただきたいと思います。
長岡 理知
長岡FP事務所
代表