老後の生活を支える年金。意識している人は少ないものの、年金は雑所得とされ、課税対象。ただし所得水準があり、そのラインを超えない限りは課税はされません。年金受給者、課税されるか、されないかのボーダーラインについてみていきます。
月収42万円だった「勝ち組」サラリーマン、定年後の嗚咽…役所も教えてくれない「年金211万円の壁」に「まさか、聞いてないよ」

住民税「かかる/かからない」ボーダーライン上にいるサラリーマン…現役時代の給与額

前出の計算式から考えると、65歳以上の場合、単身世帯では「110万円+45万円=155万円」が、夫婦世帯では「110万円+(35万円×2+31万円)=211万円」が、住民税がかかるかかからないかのボーダーラインとなります。

 

年金「年211万円」以下。現役時代、どれほどの給与を手にしていると、このラインに引っかかるのでしょうか。

 

国民年金が満額支給の場合は、2023年4月(6月支給分)から6万6,250円。また会社員や公務員などが対象となる厚生年金は、加入期間が2003年3月までは①「平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月までの加入月数」、加入期間2003年4月以降は②「平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数」で計算できます。

 

ではストレートで大学に入学・卒業をして就職し、60歳定年まで働いたサラリーマンについて考えてみます。国民年金が満額支給だとすると、厚生年金部分は131.5万円以下でなければなりません。便宜上②の式でのみ使って考えると、32等級ある平均標準報酬額のうち29等級以上、標準月額54.5万円以上だとこのラインを超えることになります。そして平均的な賞与を手にしていると仮定すると、大卒サラリーマンで月収で42万円以上であれば211万円のラインを超える可能性が出てくるのです。割合にして17〜25%程度。少数派の勝ち組は、この「211万円の壁」を意識しないとならないでしょう。

 

またこれは「夫婦世帯で世帯主の所得」に限ってのこと。世帯主の所得が211万円以下、かつ妻(夫)の所得が155万円以下でなければならないことを忘れてはなりません。

 

ある意味、サラリーマンの勝ち組だけが意識しなければならない「年収211万円の壁」。この壁を境にすると、1年で約6万円ほど、手取り額に差が生じるといわれています。また住民税非課税世帯であれば、健康保険料や介護保険料の負担が減るというメリットも。なんとか「年収211万円の壁」を超えないよう工夫を……と考える人もいるかもしれません。

 

たとえば、年金の繰上げ受給。65歳から受け取れる年金を1ヵ月受け取りを早めるごとに0.4%減額され、満60歳で手にすれば30.0%減額されます。ただ一度減額されると、この減額率が生涯続くので注意が必要です。また住民税非課税限度額の壁は、居住地域によっても異なり、203万円や193万円がボーダーラインという地域もあり注意が必要です。

 

「210万円」か「211万円」か。その差は大きく、役所が「大変ですよ、注意してください」と教えてくれるわけではありません。定年後、年金を受け取るときになってからこの事実を知り「まさか、聞いてないよ……」と大泣きするわけです。だからといって、過度に意識し、所得を抑えるというのも考えもの。まずはきちんと、実現したい老後をイメージして、そこから逆算して資産形成を進めていきましょう。