(※写真はイメージです/PIXTA)

ブルガタ症候群は別名「ポックリ病」とも呼ばれ、突然死の原因となる不整脈を引き起こす疾患として恐れられています。もしも身近な人がこの“ブルガタ症候群”を発症した場合、周りはどうすればいいのでしょうか。また、ブルガタ症候群を救う治療法とは。東京ハートリズムクリニックの桑原大志院長が、自身が担当した50代男性の症例をもとに、詳しく解説します。

就寝中、突然白目を剥いてうめく夫…いったいなにが?

不整脈の発作は、なんの前触れもなく突然襲ってくることがあります。そんなとき家族はいったいどうするべきなのでしょうか。

 

今回は、命を失うリスクが高い「ブルガダ症候群」から生還したある患者さんのストーリーを紐解きながら、最新の治療法と発見者がすべき行動について解説します。

 

今回ご紹介するのは、50代の男性Mさん(仮名)のもとに、実際に起きたお話です。

 

ある夜、Mさんの奥さまは、隣で寝ている夫がうめき声をあげていることに気づき目が覚めました。ハッとして横を見ると夫の眼球は上転し、完全に白目を剥いています。

 

奥さまは驚き、夫に声をかけますが、Mさんはうめき声をあげるまま応答しません。やがてうめき声すらなくなり、妻は直感的に「このままでは夫が死んでしまう!」と思いました。すぐに隣室で眠っていた子どもの名を大声で叫び、救急車を呼ぶように言いました。

 

そして奥さまは必死に記憶をたどり、夫の胸に手を当てて力いっぱい心臓マッサージを始めたといいます。部屋に飛び込んできた長男も救急車を呼んだあと、奥さまと交替で泣きながら必死に心臓を押し続けました。

 

10分後、救急車が到着。救急隊員がその場で心電図を取り、心室細動が起きていることを確認したあと、すぐにAED(自動除細動器)を使って電気ショックを実施しました。

※ 心室細動……心臓の血液を全身に送り出す場所(心室)に異常が発生して心臓がけいれんし、不規則にブルブル震え(細動)、血液を脳や全身へ送り出せなくなる状態のこと。(https://www.ak-zoll.com/aed/column/aedcolumn011.html)

 

幸いにも心室細動は停止し、自己心拍が再開しましたが、変わらず呼吸は止まったままです。人工呼吸が施され、Mさんは筆者が当時勤務していた救急病院へ搬送後、すぐにICUへ運ばれました。

 

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