年収1,100万円は460万円に激減…いったいなぜ?
Aさんの仕事は自動車の営業マンです。高級輸入車の営業であるため、大半が富裕層の個人客との商談です。かつては企業経営者が自分の会社に営業マンを呼び、平日の昼間に社長室で高級車の商談をしたものですが、いまは従業員の目が厳しく、そのようなことはできません。商談の多くは土日に限られます。それも自宅訪問ではなく、ショールームにて行うのが最近の流れです。
多くの自動車ディーラーは土日に大きな集客イベントを行い、新規の商談を増やそうとします。Aさんは後輩の育成業務もあり、土日の新規来場客への接遇についてアドバイスしながら自分の商談もこなしています。Aさんにとって土日の仕事が最も大切なのですが、妻の死後、これが不可能だと知ることになりました。
簡単な話です。これまで土日は妻のMさんが子供たちといてくれたのです。妻亡きいま、子供たちが頼れるのは父親のAさんしかいません。土日に子供を見てくれる親や兄弟も近くには住んでおらず、Aさんは子供に合わせて土日は休まざるを得ないと初めて気が付きました。
母親がいなくなり、父親まで仕事に奪われるという寂しい状態にはできません。母親が亡くなったのだということを次第に理解しはじめた子供2人は、日ごとに情緒が不安定になり、保育所に行こうとすると泣き叫ぶようになりました。
以前は成績不振の同僚に退職推奨していたが…「今度は自分の番」へ
「土日はもう働けない……」Aさんがそう考えたとき、厳しいお金の現実を知ることになったのです。
土日に働けなければ自動車を売ることはできず、歩合給も入らない。つまり急激な収入減に直面するということです。それどころか、営業マンとしての業務ができなくなった自分に、販売会社のなかで居場所があるかどうかもわかりません。成績不振の営業マンに退職を勧めることも多くあったAさんは、「今度は自分が辞める番なのか……」と不安感が襲ってきました。
幸い、上司に相談したところ本社での内勤職に異動できるかもしれないということになりましたが、収入は激減することが予想されます。さらに本社は自宅から車で1時間半の距離にあります。保育所からの急な呼び出しには対応できません。