Aさんはどうするべきだったのか
せっかく購入した自宅を失う結果となったAさんですが、妻のMさんが健在だったときになにをすべきだったのでしょうか。
「歩合給」をあてにした将来設計をしない
Aさんのように「企業に雇用されて自社商品を売る」タイプの営業マンにとって、歩合給をあてにしたライフプランは極めて危険です。勤務先の報酬体系に変更があったり、取扱商品が時代に合わず売れなくなったりしたら、簡単に収入が減少します。
Aさんは自動車ディーラーの営業マンであるため、メーカーの不祥事があったらある日突然売れなくなってしまいます。販売会社である勤務先がパワハラなどの不祥事でネット炎上した場合も同様です。自分だけの力ではどうにもならない非常に不安定な収入なのです。あくまでも固定給部分が年収だという前提で将来設計をするべきです。
「妻の死亡保障」を用意しておく
専業主婦=収入がない=死亡保障は不要、と考えるのは安易です。専業主婦の家事作業を時給1,300円として換算すると、年収にして374万円であるという考え方も存在します。妻が亡くなると収入がなかったはずなのに経済的損失が大きく驚くことになります。
妻が死亡したときの損失額を予測し、必要な額の生命保険に加入しておく必要があります。これには高額な掛け金は不要です。月に数千円程度で大きな保障が用意できるので、生命保険会社を十分に比較しながら検討すべきポイントです。
家事への参加
「専業主婦だから妻が家事をすべてやればいい」「専業主婦なのになぜ夫も家事をするのか」という考え方をする男性はいまでもいますが、妻に万が一のことがあったら、家事や育児、お金回りのことが何もわからず途方に暮れてしまいます。日ごろから夫も家事を行うことで、妻との情報交換ができます。万が一のときにもそれなりに対処できると思います。
妻も自分の家事労働を聖域化せず、夫と共有する意識が必要です。専業主婦という生き方は決して否定されるべきものではなく、ひとつの人生の選択肢です。しかしリスクという点では就業する場合と同じく対策を取っておく必要があります。専業主婦は無収入だとしても、亡くなったあとでは家計にとって大損失なのです。
長岡 理知
長岡FP事務所
代表