「世帯年収1,000万円でも節約の日々」という異常
野菜をはじめとした食品価格の高騰で、スーパーで真っ先に手にとるのは、節約の代名詞でもある「もやし」だ。東京23区などの都心では、スーパーの店頭で一袋が27円など、30円を切るのが最安値であることが多い。たまねぎ、じゃがいも、にんじんといった野菜に手が届かず、値引きされた食材を買っていく。
就職氷河期世代を中心に、「平均年収では"普通"の暮らしができない国」というのが日本の現実なのである。
都内に住む30代の女性は自治体の非正規労働で、年収は348万円。夫の年収と合わせた世帯年収は、約1,000万円。十分な収入があるように見えるが、「私は下のほうで生きている」と感じている。
スーパーで最安値の買い物をする毎日。割引シールの商品を買うのは当たり前だ。たまには「スターバックス」で「和三盆ほうじ茶フラペチーノ」が飲みたいけれど、トールサイズで705円かと思うと、ぐっと我慢する。ランチに1,000円なんて贅沢すぎる。昼食は220円でサンドイッチを買うだけ。
世帯年収が1,000万円でも、家のローン、子どもの学費を貯金するので精一杯。ワンオペ育児であくせくする毎日で、鬱病にもなった。自分たちの老後も心配で、不安は膨らむ。
北陸地方に住む30代男性は、リーマンショック後の就職氷河期世代。現在、電車の運転士で、年収は450万円。その地域の平均収入を超えている。
不妊治療を始めるところで、「いったい、いくらかかるのか」と頭を悩ませている。自分で弁当を作り、水筒にお茶を入れて仕事に出かける。
スマートフォンの契約は、「au」から「UQモバイル」に変えて利用料を月5,000円ほど浮かせる。妻も同じくらいの収入があるが、5年ごとに仕事の契約が結ばれるため、見通しが不透明。ダブルインカムが続かない可能性もある。
男性は倹約して、残ったお金をすべて貯金に回している。平均年収があっても、多くは家計がギリギリ。得体の知れない将来不安も抱え、出費を抑えている。これでは消費が落ち込み、景気がよくならないのも当然だ。
そして、収入が平均値を下回れば、もっとつらい現実がある。
小林 美希
ジャーナリスト