月額の給料は同じでも、退職金に大きな格差が生じる理由は?
実際、退職金はどのような計算方法で決めているのでしょうか。企業によってさまざまですが、退職時の基本給に勤続年数に応じた支給率によって求めるケースが多いようです。
たとえば「勤続5年未満であれば、基本給×1.0」「勤続5年~10年であれば、基本給×3.0」「11年~15年であれば基本給×5.0」……「勤続36年~40年であれば基本給×35.0」といった具合です。
たとえば前出の『2021年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果』によると、大卒・総合職・会社都合で60歳退職(勤続38年)で支給月収は40.0月分、高卒(勤続年数42年)で46.4月分。高卒で生産・現場労働者で46.7月分でした。
厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、大企業勤務・大卒の部長の場合、定年直前の所定内給与額は月78.4万円。所定内給与額≒基本給とすれば3,000万円以上の定年退職金が期待できることになります。定年直前に課長まで昇進した人であれば、月63.1万円。2,500万円強の定年退職金が期待でき、平均退職金に近い金額になります。定年直前でも係長どまりだった人は月45.2万円で、退職金は1,800万円ほど。非役職者とそれほど変わらない退職金となります。
ーーさすが大企業の部長まで上りつめると、退職金も凄いことになるなあ
そう思った人も多いでしょう。もちろん平均値で考えればそうですが、大企業の部長であれば誰もが高額の退職金を手にするとは限りません。所定内給与額の分布をみていくと、大企業部長の中央値は月71.4万円。下位25%で月61.0万円、下位10%で月51.1万円。「やはり、大企業の部長!」と羨望の眼差しを向けたくなりますが、わずかながら、月30万円にも満たない大企業の大卒部長も。その場合、定年退職金は1,200万円を下回る計算です。
企業のなかには、退職金の規定を基本給としながら、その基本給を低く設定している場合も珍しくありません。たとえば給料は月70万円を超えていても、基本給70万円の部長もいれば、基本給30万円で手当が色々ついて月70万円の部長もいます。それまで同じような給料を手にしてきた部長でも、最後の最後で大きな差を思い知ることになります。
――まさか、こんなに退職金が少ないとは!
給与は総額で見てしまいがちなので、自身がどれほどの基本給で働いているか、意外と分からない人は多いもの。実際に退職金を手にしたときにそう怒鳴ったとしても、なんら可笑しいことはなく、きちんと就業規則に記されている通りの方法で算出した金額のはず。むしろ、怒りを覚えたほうがちょっと恥ずかしい思いをすることになります。
そんな“恥ずかしい部長さん”にならないよう、就業規則はきちんと確認しておきたいもの。また「どうやら退職金は少ないらしい」という事実が分かったら、退職金をあてにしないマネープランをしっかりと組み立てておくことが重要です。