“おひとり様”のAさん、老後に必要な資産額は
長らく日本では、60歳が定年とされてきた。しかし、政府が2013年に施行した『高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)』により、2025年4月からは「65歳までの雇用確保」が企業に義務づけられている。
企業には、以下のうちいずれかの措置を2025年4月までに講じることが求められている。
2.65歳までの継続雇用制度(雇用延長・再雇用制度)の導入
3.定年制の廃止
賃金がなかなか上昇しない状態が続き、さらなる少子高齢化がほぼ確実視される日本においては、「働き手の減少を食い止める」という点においては喜ばしいことだ。
とはいえ、「定年後は働きたくない」というのが働く者の本音だろう。今回は33歳の独身男性Aさんの事例をもとに、老後必要な資産額と注意点についてみていきたい。
「悠々自適」な老後は叶う?
都内の中小メーカーに勤める33歳独身のサラリーマンAさん。家賃7万円のワンルームに住み、彼女はいない。仕事に対する意欲は低く、結婚にも興味がないため、「このままほどよく楽しい人生を続けたい」と考えている。もちろん、現時点では定年後に働く気はない。
定年を65歳としたとき、Aさんは定年退職後働かずに暮らすことは可能なのだろうか。Aさんが100歳まで生きると仮定し、必要な金額を試算してみよう。
【Aさんのプロフィール】
・年収……450万円
・家賃……7万円/月(ワンルーム)
・保険料……1.9万円※1/月
・生活費……15.8万円※2/月(33歳時点)
※1 保険料は30代男性の平均保険料を参考にした。
※2 物価上昇を考慮。
以上の条件で100歳までの必要資産額を算出してみると、結果は約3億円となる。資産運用を行わず、預貯金のみで生活しようとすると、老後の資金不足は免れないだろう。
金融広報中央委員会の調査によると、30代単身者の平均貯金額は手取り年収の平均15%前後だという。年収450万円のAさんの場合、年間50万円の貯蓄をしたとしても、働いているあいだは無理なく生活が続けられそうだ。
しかし、Aさんのように貯金できる金額が多い人ほど注意しなければならないのが「インフレリスク」である。